第8章 運命の番(過去編)3
The・修羅場である。リビングのソファーに腰掛けて零さん、陣平さん、研二さんの三人は深刻そうな顔色で頭を抱えていた。そして景光さんはと言えば私と一緒に珈琲の準備に取り掛かっていたりする、そこで一緒に頭を抱えなくていいのかと思うも、顔に出ていたのか苦笑いを浮かべられる。
「俺は春枝に別の番がいることに気付いてたから。後はそうだな…昔からゼロが春枝のことで俺達を近付かせないように試行錯誤を繰り返していたし、ゼロの女だと思っていたから余り驚かなかったんだ」
「景光さんってかなり鼻いい?」
「あぁー…確かにそうかも。助けに来てくれた時もなんとなく春枝だと気付いてたし、助けられた時とかゼロ以外の松田や萩原の匂いが春枝から匂ってたからそうじゃないかと思ってたんだ…春枝自身が警察官じゃないと、一般人がそうそう人の匂いなんて移らないしさ」
「……景光さんも相当刑事に向いてますよ」
「ははっ…そう言われると照れるな」
匂いで分かるなんて、かなり鼻がいい限り分からないと思うが…現に他の三人は今知ったようで、なんでそれを早く言わなかったと私と景光さんを睨んだ。
「「だって聞いて来なかったし」」
ズレもなく、ねぇー?と二人で首を傾げれば苛立つようにずっと睨んで来る。五人分のティーセットを準備して、手馴れたように珈琲を注いで行く。今回はマンデリンにした、酸味は控えめで、深いコクとほろ苦さのバランスが絶妙だったりする。
「うーん…分かりました。それなら順番に説明致しますので、分かりやすく紙とペンをご用意致しますね?」
ーーー。
私(小学高学年)
私がまだαのコントロールが出来なくてΩの男に攫われそうになっていた時に緑川景光さん(高校生)に助けられる。しかし彼は私の運命の番だったが逃げた。十年後にまた再会する。
私(中学生)
降谷零さん(高校受験生)のヒートに出会す。私が助けて二人目の運命の番に出会い、番になって欲しいと言われた為番候補でお願いと説明。それから仲良く私が高校生くらいまでの付き合いをしていたが警察官になってから音信不通に。
私(高校生)
零さんと音信不通になって少し経ってから萩原研二さん(七年前)と偶然爆発物が発見されてバタバタの頃に出会い、彼から運命の番だと言われる。流石に高校生だからまだ番候補でとお願いする。