第8章 運命の番(過去編)3
「えっ、なにこれ…どういう状況。なんで春枝ちゃんが泣いてるの?なんで松田は春枝ちゃんのこと抱き寄せてるの?えっ、俺だけ除け者とか狡くない?頑張った俺にはご褒美なし?」
「研二さん生きてる…いきてるっ…」
「って、なんで泣くの!?えっ?俺が悪いの!?」
「萩原喧しい、お前今はまじで黙れ」
「えぇー…陣平くん、酷いぃ…」
処理を終えて着替えてから私の前に現れた研二さんは全く今の状況を飲み込めていなかった。しかしふらふらと陣平さんを傍においたまま研二さんを引き寄せて抱き着いた。胸板にスリスリ頬を擦り付けて研二さんも生きてる…生きてる…うわぁああんっ!とそれはもう私自身のなにか大事なものを落として来たような壊れるくらいのギャン泣きである。後ろから抱き締めて私をあやすように頭を撫でる陣平さんがいたり、オロオロと前から私を抱き締めて落ち着かせようとする研二さんがいたりと、イケメンの番にサンドイッチにされた状態で私はボロボロと泣いていた。
ーーー。
「うぅ…もうやだ、死にたい…」
「春枝ちゃんが死んだら今度は俺が泣いちゃうから死なないでよー…」
「ははっ泣くくらい俺達のこと心配してくれてたんだろ…嬉しかったぜ」
「うぅ、二人が意地悪するぅー…でもしゅきぃ…」
ケラケラ笑う二人を恨めしく睨みつつ、真っ赤になった頬を両手で押さえる。ただいま私は研二さんの車に乗せて貰い揺られながらに家へと送り届けて貰っていた。助手席では機嫌良さそうにタバコに火を付ける陣平さんがいたりして、あぁ…幸せだな。と顔を綻ばせた。
ーーー。
「春枝、これはどういうことだ…?」
「なんで降谷と緑川がいるんだよ!?」
「よお、邪魔してるぞー」
「いや、それは俺が聞きたい。春枝、俺が全力で遠ざけていたのに…なんで二人と知り合いになってるんだ?」
順番に、陣平さん。研二さん。景光さん。零さんと私に尋ねて来る。景光さんだけは私に別の番がいることに気付いていたようなので、のほほんとした声を出していたが…真顔で睨むように私の両肩を掴みながら尋ねて来る零さんが怖い。というか案の定私を爆発物処理班のエースからわざと遠ざけていたらしい。流石といえば流石だが…結局巡り巡って出会ってしまったなら仕方ないと思う。それよりなんでお二人がいるの?えっ?鍵は?どうやって入ったの?