第8章 運命の番(過去編)3
私は表情を緩めた。研二さんは呆れたようなため息をついて私の頭を撫でると爆発物へ向かって行く。他の爆発物処理班に保護される形でシャッターから追い出される。このまま居座っても良かったのだが、研二さんの邪魔になるのは余りにも頂けないので素直に応じることとする。外からシャッターが閉まった現場を沢山の人が心配そうに見ていた。あれから5分程経ち、真っ赤な車が急ブレーキをかけながら真横を通った。すると助手席から陣平さんが現れてズンズンと強く睨んで私の前まで走って来る。そして私の前に来ると笑っているがこめかみ部分が怒張し青筋を立てていた。かなりお怒りモードである、私は逃げられない。
「お疲れ様です、陣平さん」
「この馬鹿っ!!どれだけ心配したと思ってんだ!!勝手に用件だけ伝えて切りやがって!!」
「あぁー…やっぱり焦りましたか。陣平さんのことを考えると、そうしたほうがいいかなとは思ったんですけど」
「お前な…全く反省してねぇだろ」
「てへっ?」
「てめぇっっ!!」
可笑しくてカラカラ笑う私に向かって胸ぐらを掴み、そのまま殴り掛かろうとする陣平さんのネクタイを引っ張り、噛み付くようなキスをした。それから直ぐにでも貪るような口付けをし、舌を割入れかき回す。彼の細いが引き締まった腰を引き寄せた、辺りには沢山の人が真っ赤にして見つめていたが私は何処吹く風の如くディープキスを繰り返す。
「はっ…ん、ぁ…春枝、ぁ…ぉい…ん゙ぁっ」
「はぁ…んっ…ふふ、陣平さん愛しています」
「っ、いきなりなんだよ…」
「生きてくれてありがとう…」
ぽふりと胸板に顔を押し付け耳を付けて、心臓の鼓動を聞く。暖かい体温…落ち着きのある鼓動に安心した。あぁ…彼は生きている。死なずに怪我もなく私の元へ来てくれた、それだけで笑みがこぼれてポタリと涙が流れた。まさか安心して泣くなんて…格好悪いと思い涙を我慢するも溢れ出てしまう。下唇を噛み顔をうつむかせて口元を手の甲で押さえる、なるべく嗚咽を漏らさないように気を付けていたけれど直ぐに陣平さんは気付いて、両手で私の頬に触れて持ち上げた。
「嫌っ…今私の顔、酷いから見ないで下さい」
「っ、泣くな…怒って悪かった。俺生きてるから…」
「っごめんなさい…番、解消したくない…だって私は!」
私の言葉を遮るように陣平さんは口付けを落とす、そのキスは涙の味がした。