第8章 運命の番(過去編)3
「嫌です。なにより私は死にません…なぜなら陣平さんが助けてくれることを信じてますから」
「なっ、チッ…今から萩原を呼んでやるからちょっと待ってろ」
「えぇ。研二さんが来てくれるのは心強いですけど、陣平さんは本当に解体してくれますか?他にも爆発物があるかも知れない…だから貴方は結局解体をしない。違いますか?」
私の声に、図星をつかれたのかぐっと口を閉ざす。分かりやすい人だ、だからこそ私はうっそりと笑った。
「貴方が死ぬなら私も死にます」
「はっ…」
「100対1なら貴方は1を選ぶ…だからこそ私は敢えて1対1にしました。もしも自己犠牲を選ぶのなら、私は今直ぐにでも爆発物を床へ叩き付けて自爆します」
「お、お前…なに、いって…は、萩原はいいのかよ!?幸せにするって!そういったのは嘘だったのか!!」
「陣平さんのいない人生を残りの番と歩んだ所で…それは決して幸せとはいえませんよ。残された者の気持ちを良く理解して行動して頂きたい…」
狂ってる?そんなの自分自身が一番良く知っている。だがそう言わない限り彼の心は揺るがないし、なにより焦ることを知らない。誰かが命懸けにならないと意地っ張りな陣平さんは行動力はあるが、一度こうと決めれば絶対に動こうとはしないのだ。さて…彼はどうするだろうか。そう私は足元の爆発物を覗き込み、また焦らせる彼を内心気の毒に思うも口を開いた。
「残り時間…30分を切りました。まだ間に合いますよね?」
「……っだが」
これでも駄目かと私は目を伏せる。余り言いたくはないし、相手を傷付けることとなるが仕方ないと顔を上げた。
「もしも…貴方になにかあったなら私は貴方との番を解消致します」
「っ、な…にを…」
「だからどうか…生きてっ」
「っ、春枝…」
ーーー。
繋がらなくなり、切れてしまった携帯から耳を離し大きくはぁ…とため息をついた。あんな…番を解消するだなんて脅迫をするような言い方をしてしまった。なにより幸せにすると約束した陣平さんを傷付けてしまった、それがなにより悔やむ。しかし彼は私の言葉を聞いて「直ぐに迎えに行く」と伝えてくれた。10分程で爆発物処理班の方達も到着し、ちゃんと防護服を着ている研二さんが私に声を掛けた。
「春枝ちゃん…松田から詳しい話しを聞いたよ。全く無茶するね?」
「ふふ…でも私、謝りませんからね?」