第8章 運命の番(過去編)3
「もしも…貴方になにかあったなら私は貴方との番を解消致します」
「っ、な…にを…」
「だからどうか…生きてっ」
「っ、春枝…」
ーーー。
私は番が四人いるのだが…そのうちの二人は爆発物処理班のエースであり、もう二人は公安に所属していたりする。私は定期的に呑む発情抑制剤を貰いに米花中央病院へ偶然にも居合わせていた。いつもと変わらない診察を受けて、薬を受付けの看護師から受け取るといった簡単なモノである。だから当たり前のように待合室で名前を呼ばれるのを待っていた。
その時なぜかふと研二さんと陣平さんの顔がチラついた…そういえば今日は何月何日だろうか。私はなんとなく携帯を見下ろした。画面には11月07日と書かれており、じとりと嫌な汗をかいた。あれ?待って…私は今日で研二さんと出会って何年経ったんだ?もしかしてもなく…4年経った?
そして空気を読むのか、敢えて空気を読めないのか…なんとなくフラグ回収してしまった私は、先程まで全く気にもとめていなかった足元を見下ろした。そこには妙な包み紙の袋が置いてあるではないか…ガヤガヤと周りの声が騒がしい為、不審物から音は拾えないが…そっと不審物の中を見る為に、椅子から立ち上がり真下の床に膝をついて動かさないよう慎重に袋の中を覗いた。
「うわっ…やっぱりあったよ」
カチカチと時間を刻む数字と良く見るような…いかにもの爆弾な雰囲気に顔が引きつる。しかし妙に冷静に観察してしまい、こういうことに慣れているというのは自分自身どうなんだと呆れ返るも、先ずは待合室にいる人達を避難させようと立ち上がった。
ーーー。
見渡す限りでは人っ子一人おらず、全ての窓からドアまでシャッターを閉められており…広々とした待合室には私と爆発物しかない。
よし、これで隔離は完了した…医院長と親しい関係で良かったと両親へ感謝する。もしも小娘の戯れ言で話しを無理矢理終わらせられた場合、私一人が急いだところで間に合わないだろうし、直ぐにでも避難させるのは無理だったからだ。親の権力をフル活用しているが、こういう場合は仕方ないと椅子へ腰掛けて陣平さんへ連絡をいれる。
何コールかして、陣平さんの声が聞こえた。落ち着きのある優しい声にまだ生きてたとほっとする、今どこにいるか尋ねると観覧車と答えが返って来てクスリと笑った。
「陣平さん…まさか浮気ですか?」