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裏『探偵』αな女がΩの男達に求愛される話。

第7章 運命の番(過去編)2


ヘルメットを脱いだお兄さんは目を見開いて酷く悲しい顔になる。彼の気持ちは分かっている、自分のせいで関係のない一般人を巻き込んでしまったと思っているのだろう。だがそれは違う…私が勝手に自分から巻き込まれていったのだ。ヘルメットをバイクにかけてお兄さんのヘルメットも受け取ろうと手を伸ばす。戸惑いながらも手渡してくれた彼が微笑ましくて目を細めた。

「貴方を助け出せて良かった、逃げないでくれて嬉しかった…あの、私が誰か分かりますか?といっても一度しか会ってないですし…随分昔の話しなんですけど」
「ど、して…なんで…君がっ…」
「貴方は私の恩人だから…どうしても助けたかった」
「っ、違う!あれはただ偶然見掛けたからであって、君を助けたのも俺のエゴだ!でも目が合った瞬間、君は俺の運命だった!君に会いたかった!でも駄目だったっ!会ったら今度は俺が君を傷付ける…あんなにも怖い想いをした君を傷付けたくはなかった。警察を待たずに結局君を一人ぼっちにして逃げた俺なんかが…君の番になる資格なんてないんだよっっ」

ポロポロと涙を溢れさせて、頭をぐしゃぐしゃにし地面へと座り込む。私はそっとその小さくなってしまった彼の身体に触れて、正面から屈みながらに抱き締めた。優しくしないでくれと私から身体を離そうとさせるお兄さんに問い掛ける。

「貴方のその自己満足で今の私がいるんですよ?貴方が助けてくれたから…私は笑っていられるんです、Ωの人でも優しい人はいるんだって気付かせてくれた。それだけでも私は救われたんです…」

ぐしゃぐしゃにした黒髪を撫でて指先で解きながら、私はボロボロになったお兄さんを見つめた。私の腰に両腕が絡まる、甘く柔らかい匂いが私を包んだ。あぁ…そうだ。この匂いだ。やっと捕まえた…ずっと傍にいて欲しかった人。私の運命。

「お兄ちゃん…数年、いいえ…もうかれこれ十年経ってしまいましたね?けれど漸く出会えた、理由は聞きません…ですが今度は私が貴方の厄災全てから必ず守ると誓いましょう」
「っ、俺と一緒にいたら…君が狙われてしまう…」
「大丈夫ですよ?もうただの小学生じゃありませんから…」

だから、私の番になって貰えませんか?そうお兄さんの頬を濡らす涙を拭いながらぽつりと呟いた。

「おれ…なんかで…いいのか」
「なんかだなんて止めて下さい…私は貴方が良いんです。だからもう逃げないで」
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