第7章 運命の番(過去編)2
切羽詰まったように走る彼を追い掛ける。携帯を片手に「大型トラックにバイクを積んで迎えに来て欲しい」と連絡した。今日はかかとの高いヒールじゃなくて良かったとも思う、パンプスでパンツスーツスタイルだから走りやすい。人混みをかき分けてぶつかった相手には謝りつつ、見失わないように駆ける。どうか…まだ早まらないで。今度は私が貴方の力になりたいのだ。
ーーー。
私の携帯に埋め込まれているGPSを辿って運転手が迎えに来てくれた。私は急いで乗り込み後ろを開けて貰うようにバイクへ跨る。ヘルメットを深く被り、運転手に準備が出来たことを伝える、大型バイクを鳴らし勢い良く外へと飛び出した。
ビルの隙間を縫うように逃げ続けていたお兄さんがいて、急いでビルの階段へと駆け上がっていく。そんな彼を攫うようにバイクで颯爽と私は現れた。驚いて尻餅をついているお兄さんに見下ろす、若干既に涙目で私に恐怖を抱いているようだが、今は助け出すことだけを考える。
「乗って」
「いや、まっ…」
「早くっ!」
「ひっ、は…はいっ!」
つい焦る気持ちを抑えきれず、大声で叫んでしまった。余りのヘルメットを彼に投げて後ろに座るように促す。バイクに跨り、私の身体へ遠慮がちに掴んだ為、振り落とされたいのだろうかと思ったことは内緒である。振り変えれば、バッと私から手を離してじわじわと赤くなる顔につい可愛いとも思えたが、手を掴み強引に腰周りを絡ませる。戸惑う声が後ろから聞こえるが私は敢えて聞こえない振りをする。
「振り落とされないようにしっかり掴まって下さい…今度は私がお兄ちゃんを助けます」
「えっ…」
バイクのエンジン音と共に急降下へ滑り落ちるように階段を下りる、途中で長髪の黒髪が私と擦れ違い驚いたように眺めていた。先程の男はライ…赤井秀一だろうか。それじゃあやっぱりこの人はスコッチで、零さんの足音を聞き組織の人間と聞き間違え、切羽詰まり自害し殉職する。まぁ…全員NOCだから私自身がバレたところで大丈夫だろうと思う。うん…そう思いたい。
ーーー。
薄暗いビル街を抜けて、明るい街へ出る。そのまま私が住む高層ビルへ向い地下駐車場へバイクを置いた。フルフェイスの私に警戒するように後ずさる彼が少し可笑しくてヘルメットを脱いだ。サラリと髪が宙を舞い、安心させるように微笑む。私のことを覚えているだろうかと期待を膨らませて…