第7章 運命の番(過去編)2
記憶が戻ったのは…私が成人を迎えた時だった。通称朝チュンというのか、私を真ん中に二人のイケメンの番が私を抱き締めて眠っていたという現実だけで…うわぁ、まじか。やっちまった。と頭を抱え、私明日から彼等のファンに刺されない?と背筋を凍らせてぶるりと身体を震わせた。
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私は成人して親の会社へ一般の会社員として働き始めた。簡単に社長秘書という立場で親のコネで入ることも出来たが、結局のところ七光りなんて言われたら、将来継ぐであろう会社のメンツが立たないからということで両親の甘い言葉を全て蹴った。祖父母は頑張りなさいと私の肩を持ってくれて、例えなにかあっても影で支えてくれるということも伝えてくれた。結論から言えば両親、祖父母も相変わらず私に甘かったりする。
この時にはもう既に研二さんや陣平さんとも知り合って番になった、盛大な私の成人式のパーティーを行おうと試みるも、なにやら殺人事件、爆弾テロやらでズルズル引き伸ばしてしまう。だから未だにパーティーは出来ていなかったりする。しかし私の成人を迎えた誕生日には高層ビルへ遊びに来てくれて、お二人からは酒の入った袋やツマミなどを手渡されて呑むぞと楽しげに笑い掛けてくれたから気持ちが昂り嬉しくて抱き締めてしまった。
酔った勢いというのは余りにも失礼だろうから、会って早々に遅くなってごめんなさい…必ず幸せにしますので番になって貰えませんか?とプロポーズすれば二人から勢いよく抱き締められた記憶を思い出す。
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そんな事があり、私はいつも通りの日常生活を繰り返していた。番が出来たところで私自身なにか変わるわけではない、ただ主人公のコナンくんに会えるのはまだ先だろうと思いつつ…会いたいけど会うのは怖いなー…なんて思っていたりした。鈴木財閥のご令嬢…鈴木園子の姉。綾子とは歳が近いという理由でとても仲良くさせて貰っていたりする。必然的に園子ちゃんや蘭ちゃん、勿論のこと新一くんとも知り合いであり一人っ子の私は妹や弟のように可愛がっている。最近仕事で忙しいから会って癒して貰いたいとさえ思った。
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一段落終えて、私はいつも通りに高層ビルへと足を進めていた。その時…ふと目に映った黒髪の横顔が私の横を走り去る。この匂いは…この顔は…この姿は…なにもかもが懐かしく、けれどしっかりと覚えていた。漸く見つけた…あの時のお兄ちゃん。