第6章 運命の番(過去編)1
私の言葉によっしゃ!と二人が内心ガッツポーズしていたとは露知らずサラダに使う野菜を洗って欲しいということを伝えて、副食の鮭のムニエル、ゴマ味噌風味を作ろうと手を動かした。
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「なんだこれ、美味過ぎるだろ…」
「うわ…めちゃくちゃうまっ!」
「お口に合ってよかったです」
「「(俺のαが有能過ぎて尊い…新妻かよ。結婚しよ)」」
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「今日泊まっていっていい?」
「いや、駄目だろ」
「あはは…流石に未成年の家に泊まるのは警察官としても余りいい印象じゃないでしょうし。そうですねー…私が成人した時に祝ってくれませんか?」
「!…春枝ちゃん。あのっ…それって…」
「!…春枝本気にするぞ。嫌がっても無理矢理入るからな?」
「えぇ、皆さんで祝いに来て下さい…経った数年の間です。だから…待って貰えませんか?」
彼等の言いたいことは分かる。私は番候補と言い待って貰うことを伝えた。だからこそ二人は焦るのだろう…その数年のうちにもっと若いΩの男やΩの女に目移りして捨てられるのではないかと。だから口約束でもまだ繋がりを持っていたいと遠回しにいった私の言葉をすぐさま気付いた二人は嬉しそうに目を細めた。
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「明日も必ず来るから!デートしよう!」
「お前なぁ…」
「ふふ…いいですよ。私も明日休みですし」
「はっ?まじで?だったら俺ともデートしろよ」
「いや、松田…お前は明日普通に仕事だろ」
「何がなんでも有給もぎ取って来る」
「私はお二人のことをもっと知りたいですから。あぁ…なんでしたら明日は私がお二人をリード致しましょうか?」
二人の手をすくいあげるようにそっととり、笑みを溢れさせると胸を強く押さえて顔を思い切り背けている二人がいた。
「あぁうん…無理…俺のαが強過ぎる」
「ふざけんな、イケメンかよ…惚れ直すわ」
「「キュンキュンじゃないな、ギュンギュン来るわ」」
一つのズレもなくはっきり言っていた。私はぽかーんと一瞬口を開けて瞬きするも、直ぐにクスリと笑う。明日迎えに行きますね?と伝えて二人はドアを開ける、優秀なコンシェルジュが二人を迎えに来ており、駐車場までの道のりを案内している。私は廊下に出て軽く手を振りエレベーターが閉まり見えなくなるまで見つめ続けていた。
ーーー。
明日の予定はと携帯の番号を押す、先ずは両親に伝えようか。