第7章 運命の番(過去編)2
両親に番候補が二人出来たと伝えた。相変わらず父はすっ転び母は歓喜の声が電話越しから聞こえる。将来必ず連れていくことをいい、要件だけを伝えて切った。そうじゃないと話しが長いし根掘り葉掘り聞かれると思ったからだ。
初デートの続きは…また別の時に伝えようと思う。
ーーー。
私の番候補は陣平さん、研二さんの前にもいたりする。それはまた昔へとさかのぼるが…私がまだ小学高学年の頃だ、私自身バース診断を終えており、やはりというのか私はかなり濃いαだった。しかしαのフェロモンをいきなりコントロール出来るわけでもない私は、少し興奮して心が昂ってしまう時多量のフェロモンを出してしまうことも多く大人達に狙われることも多かった。そんなある日ランドセルを背負い家に帰る時、送迎車を待つ私は初めて本格的に危なく攫われそうになっていた。無理矢理手首を掴まれ嫌だと拒む私にニタニタと笑う男にゾッとする。ワゴン車だろう車の後部座席を開けて私を入れようと引きずる。
「春枝ちゃん…可愛いねぇ…春枝ちゃん、俺の番になってよ。幸せにする?ね、いいでしょう?」
「いや、やだっ…は、離してっっ」
「泣き顔も可愛いなー…ほら。ちょっと俺の項を噛んでくれたらでいいから。簡単だろう?俺ね…ずっと近くで見て来たんだよ」
軽くパニックに陥り、助けを求めようと思うも声を上手く発せられない。助けて、誰か…お父さん、お母さんっ!そう恐怖に震え目をつぶる私に高校生のお兄さんが声を荒らげて助けてくれたことが始まりだった。サラサラとした黒髪が私の前に現れて、手を掴む男を無理矢理離させる。すっと私の前に手を出して冷静に対処するように携帯を片手に警察へ連絡するお兄ちゃんの後ろ姿が印象的でカッコイイと思った。そしてこの人になにかあった時、絶対恩返ししなければという気持ちに揺れていた。
ーーー。
「お兄ちゃん…ありがとう」
「ぅ、うん…もう、大丈夫だからねっ」
ふわりと甘い香りが鼻を掠める、私から後ずさるお兄ちゃんに先程の匂いとは全然違うふわふわとした匂いにドキドキした。私にはそれがまだ“運命の番”とは分からない。ただ私から逃げないで、もっと傍にいてと伝えてしまいそうで苦しかった。
「も、すぐ…警察の人、来るだろぅ、から…」
「お兄ちゃーー…」
「ご、ごめんっそれじゃぁ…」
そう言うと彼は逃げてしまった。