第6章 運命の番(過去編)1
しかし二人は表情が曇るばかりだ、流石は警察官。優しいなと私は笑う。その時上手い具合にチンッとエレベーターが鳴ったので、こちらだと二人を引っ張り部屋へと案内した。荷物をキッチンに置いて貰い学校鞄をソファーに置く。適当に寛いで下さいといえば、興奮するように研二さんは高層マンションから目を輝かせて覗き見ていた。
「うわぁ…ひろっ、たっか!眺めいいねー…」
「こんなところで一人暮らしっつーと寂しくねぇのか?」
「そうですね…確かに寂しいかも知れません。あ、あのっ…研二さん、陣平さん!だから、あの…ですね。その…暇な時とか、気軽に遊びに来てくれると…嬉しいです」
ぎこちなくて照れてしまい下手くそな笑みで二人を見上げる。すると二人は顔を手の平で塞ぎ、天井を見上げて悶えていた。まるでそれは推しが尊いというような雰囲気で苦笑いを浮かべる。バッとこちらを向いた研二さんは興奮した様子で口を開いた。
「当たり前でしょうが!なんなら毎日通うよ!」
「萩原が通うなら俺はここに住む」
「あ、ずりぃ!だったら俺も住みたいっ!」
いやいや…流石に番候補ですし、未成年の家に住むのはどうかと思うーー…いや。そもそも部屋に上げてしまっている時点で既にアウトじゃないのか?と考えて見たが深く考えても仕方ないと思い止めた。ソファーに置いていた制服鞄を手に持ち、制服から普段着に着替えて来ますからゆっくり寛いで下さいと伝えて寝室へ向かう。制服のブレザーを脱ぎハンガーへかけると、普段着に着替える。相変わらず小包がまた届いており、大量の服を届けて来る両親にため息しか出ない。白トップスに淡い紫色の花柄のスカートをはいて、二人が待つリビングへと向かう。ソファーに寛いでいるというより、居心地悪く座らせて貰っているといった雰囲気で私が来るのを待ってくれていたようだった。
「ふふ…やっぱり落ち着きませんか?」
「リビングの奥にグランドピアノが置いてあるがお前弾けるんだな…」
「基本的なことならなんだって出来ますよ?和洋どちらでも…気晴らしにと両親がわざわざ買って置いて帰ってしまって」
「へぇ…俺さ、春枝ちゃんのピアノ弾く姿が見たいな」
「えっ…でも夕飯の準備が」
「それは後で一緒に手伝うから!」
はい、はい!と軽く背中を押され高低椅子に腰掛けさせられる。じっと二人に見つめられて緊張するも指をそっと置いた。