第6章 運命の番(過去編)1
有名な桜花グループの社長の愛娘…それが私である。小学低学年でバース診断を受けることになるが、低学年よりも小さい時から私は自分のαの身体で大人達に襲われることが多かった、桜花グループのご令嬢が誘拐されるなんていうことも多かったし中々濃い日常を送っていると思う。そのこともあり両親は勿論のこと、祖父母までもが過保護になり今に至る。
私は基本なんでも出来た。といっても努力を惜しまなかったが…桜花グループのご令嬢ということで、まだ言葉をたどたどしく話す頃から着物の着付けから始まり華道や茶道。三味線や琴、日本舞踊と色々と叩き込まれる。洋楽も出来なければいけないという理由でピアノやヴァイオリン、ギターなどの西洋楽器、オペラ歌手のような澄んだ歌声を披露する日々。将来は桜花グループを継がないといけなくて、歴史や経済…英語は当たり前で最低でも5カ国以上の国の言葉を覚えないといけなかった。
重圧が小さな身体にのしかかり、何度も桜花グループから逃げ出そうと思ったことか。αだから当たり前に出来るだろう?αなら出来て当たり前じゃないか?なんて陰口を叩かれ媚び諂う大人の嫌な姿も垣間見える毎日で…それがとてもトラウマもので苦しかった。
中学3年の受験生の頃、初めて両親のいうことを嫌がり逆らった。小さな反抗期というのか帝丹高校に入学したいと私は初めて自分の意見を伝えたのだ。余りにも衝撃的だったのか、驚いてソファーから転げ落ちた父と目を輝かせながらに微笑む母の姿は今でも思い出せる。
「そのままトントン拍子に話しが進み、桜花グループのご令嬢というのは伏せて一般生徒として入学したんです。勿論帝丹高校に近いということもあって高層マンションに一人暮らしをしていましたが…私自身があと少しの学生の間だけは普通の女としての生活がしたかったんですよね。まぁ…爆発物騒ぎもあって両親に酷く心配されまして、結局こんなセキュリティのある虫一匹入ることすら許されないような高層マンションに引っ越しさせられたんです」
「ふーん、なるほどな…」
「春枝ちゃんとの距離感が分からなくなって来た…」
寧ろごめんね!会っていきなりの知らない男に番にさせて欲しいなんて抱き締められて頼み込まれるなんて…そう謝って来る研二さんに私は慣れているから大丈夫だと微笑んだ。