第6章 運命の番(過去編)1
爆発に巻き込まれたからという理由で普段かなり過保護な父と母はもっと良い所に住まわせれば良かったとふらつきながらに伝えて来る。なのでコンシェルジュやセキュリティスタッフ対応の身元確認や不審者などに目を光らせる24時間体制の徹底ぶりに、監視カメラなどがそこら中に設置されている。迷路だろうかと思うほどの広さを持つ清潔感のある廊下やカードキーがないと乗ることが出来ないエレベーターもあるそんな高層マンションに住まうこととなった。父、母よ…流石にやり過ぎである。地下に陣平さんの車を入れて降りる。
鈴木財閥までとはいかないが、友好関係を結ぶ桜花グループのご令嬢だと未だ言っていなかった私は、目を丸くして周りを見渡し車から降りた研二さんと、状況がのみ込めておらずやはり周りを見渡しながら車から降りた陣平さんがいる。地下の階段を指差して、こちらだと軽く手招きした。
「こちらの階段で先ずはエントランスへ行きましょうか…お二人の顔をコンシェルジュに見せないと入らせて貰えないので」
「ちょっ!春枝ちゃん…えっと?どういうこと?」
「おい春枝、色々と聞いてねぇことがあるんだが」
「理由は分かりますが…歩きながらお教えしますので先ずはついて来て下さいな」
納得していない二人は、私の後ろへついて来る。するりと両手に暖かい人肌の温度が回されて握られる、指が絡まり恋人繋ぎのようにじんわりと感じ取れて耐性のない私はじわじわと頬を赤くした。いつの間にか私の手荷物を持ってくれている所は本当に優しくて申し訳ない気持ちになるも、両手が塞がっているのでどちらかの手を離してまで荷物を持つとは言えなかった。幸せで穏やかな気持ちになる私は、つい笑みが零れてしまいαのフェロモンを溢れさせてしまう。その匂いにつられて真っ赤にさせる二人は恥ずかしそうに顔を俯かせて視線をそらした。
「ふふっ幸せですね…」
「「(俺のαが最高に可愛いっっ!!)」」
ーーー。
「「はぁっ!?桜花グループのご令嬢!?」」
「あはは…やっぱり驚きますよねぇ」
エントランスに着き私が挨拶すると、珍しい組み合わせだったからか少し驚いたが柔らかい笑みを見せて挨拶を返してくれた。コンシェルジュにお二人の顔を確認して貰い、エレベーターのカードキーを受け取る。エレベーターに乗り込むと最上階のボタンを押した。