第6章 運命の番(過去編)1
松田陣平さんは発情抑制剤を飲んでいるからか、しっかり私の目を見て俺様オーラ全開で問い掛けて来る。結構なお嬢様だし、研二さん以外の男と付き合ったことはなかったりする為…松田陣平さんのような別のイケメンには耐性のない私はグイグイ攻めて来られてタジタジであった。恥ずかしくなりなんとか身をよじり逃げようと試みるも、自分の顔が整っているのを分かっている松田さんは耳元でひっそりと「照れてんのか…可愛い」と甘やかすように耳たぶを甘噛みして来る。私はαで松田陣平さんは後天性のΩである、なぜ私のほうが貞操の危機を感じてしまうのかが分からない。
「で、どうなんだ?」
「番は、無理です…私自身が責任をとれません」
「未成年だからか」
「未成年だから、という理由も勿論ありますが…なにより私と番になり、私になにかがあった時傷付くのはΩです。だから私は自分の身勝手な行動で相手を傷付けたくはない」
「それじゃあ、萩原を裏切るのか」
「そんなことっ!」
ない。とは言い切れなかった。私は研二さんと最終的にどうなりたいのかが分からなかったりするし、流されるままなんとなくで付き合っていたりする。けれど言わせて欲しい、そう真っ直ぐな目で松田さんをしっかりと捉えた。サングラス越しからは目を丸くする彼は少し狼狽えており、予想外の反応に私も内心驚いていたりするが表情には出さなかった。
「責任はとりますし、研二さんを必ず幸せにして見せます」
「…んだよ、それ」
「えっ…」
「だったら俺も幸せにしろ。萩原だけが運命だなんて思うな…俺もアンタの運命なんだよ」
絶対に逃がしてやらない。そんな犯人も真っ青な松田さんの視線で私の身体は凍り付く。怖い、本音をいうなら逃げ出したいとさえ思う。番にしないと逃がしては貰えないようでじわじわと追い詰めて来た。
「…つ、番候補で手を打って貰えないでしょうか?」
「番候補だぁ?」
「研二さんにもいったんです。今は番にさせられないと…私がまだ未成年というのもありますけど、養えるくらいに落ち着くまでは番候補でお願いしたいと伝えたんです」
「だがそこは萩原が稼げばなんの問題も…」
「いいえ。全部私のプライドの問題なんです。私の番になるのなら誰よりもなによりも幸せにしてあげたいじゃないですか…私の元に嫁いで良かったと思えるくらい沢山愛したいんです。まぁ…ただの自己満足かも知れませんが」