第20章 運命の番(過去編)3.5
前から萩原に抱き着いてまた大粒の涙を溢れさせる。全く状況に飲み込めない萩原はオロオロしていながらも抱き締め返しており、そんな二人に少し嫉妬した俺は後ろから春枝を甘やかすように頭を撫でつつ抱き締めあやした。
ーーー。
「うぅ…もうやだ、死にたい…」
「春枝ちゃんが死んだら今度は俺が泣いちゃうから死なないでよー…」
「ははっ泣くくらい俺達のこと心配してくれてたんだろ…嬉しかったぜ」
「うぅ、二人が意地悪するぅー…でもしゅきぃ…」
本当に俺の番は可愛い…そうニヤニヤする俺と萩原はチラリと春枝を見つめて笑った。頬を赤く染めながらジト目で睨む姿にまた別の顔が見れて可愛かった。
そして彼女の過去や、今置かれている状況を今日初めて知った日でもあった。
ーーー。
「春枝、これはどういうことだ…?」
「なんで降谷と緑川がいるんだよ!?」
「よお、邪魔してるぞー」
「いや、それは俺が聞きたい。春枝、俺が全力で遠ざけていたのに…なんで二人と知り合いになってるんだ?」
春枝の家へとお呼ばれされ、玄関のドアを開けると見知った顔が二人いた。久しぶりの再会が、まさか彼女の家のリビングだとは思わない。そして警察学校の同期である二人が俺たちを見ており、直ぐに我へと返った俺は口を開いた。次に萩原が大声を上げる、のほほんとした声で軽く手を振る緑川がいて…最後には降谷がわなわなと震えて春枝の肩を掴みかかりながら、血走った目で伝えて来た。
おい、ちょっと待て。今降谷から聞き捨てならない話しを耳にしたんだが…横にいた萩原もギョッとした顔で交互に見ている。苦笑いを浮かべて頬を軽くかいた春枝はどう説明しようかと悩んで見えた。ガシリと逃げられないように降谷の肩を組む、その上に萩原も降谷の肩へと腕を回した。
「なぁ…降谷くーん?」
「ちょっとどういうことか、俺たちにも分かりやすく教えてくれないかなー?」
「ぅぐっ…」
さぁ…春枝を独り占めしていた経由を先ずは全部吐いて貰うぜ?覚悟しろよ?
ーーー。
リビングのソファーへと腰掛けて、俺たちは降谷から全部吐けと脅す。最初は酷く渋っていたが、ぽつりぽつりと過去を軽く話し始め、緑川といえば相変わらずのんびりしており春枝と一緒に珈琲を作る準備を始めていた。