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裏『探偵』αな女がΩの男達に求愛される話。

第20章 運命の番(過去編)3.5


胸騒ぎがする。こんな非常識な状況で喜んではいけないと分かっているのに胸がザワザワしてしまい、ぎゅうぎゅうと掴まれるように激しく傷んだ。彼女にとって俺は番の一人でしかないと思っていたのだ、かなり強引に責任を取らせてしまったということもあるし…特別に一人だけを愛するという行為は春枝自身、それは望んでいなかった。だから今の言葉は俺だけに対して向けてくれた台詞であり、酷く心が揺さぶられる。そんな俺に追い討ちをかける彼女はまた呟く。

「残り時間…30分を切りました。まだ間に合いますよね?」
「……っだが」

分かってはいる。爆発物を見付けられた。だから直ぐにでも解体して春枝のもとへ行かなければと思っているのに…もしもまだ爆発物があったら?と考えてしまうと体が上手く動かすことが出来ない。渋る俺に向かって春枝は小さく息を漏らす。

「もしも…貴方になにかあったなら私は貴方との番を解消致します」
「っ、な…にを…」
「だからどうか…生きてっ」
「っ、春枝…」

ーーー。

彼女のいつも落ち着いた声とは違い震えていた。心底心配するような声に俺は春枝の名を紡ぐ。彼女は小さくぽつりと囁くように「会うまでは信用出来ません、だから生きて迎えに来て…」と可愛らしいお願いをして来る。直ぐに迎えに行くと伝えれば、ブチリと電話を切られた。何度か折り返し連絡を入れても『おかけになった電話番号は現在使われておりませんーー…』の一点張りであり、眉間にしわを寄せて大きく舌打ちし苛立った。次に出て来るのは笑みだ、可笑しいくらいに笑いがこみ上げてくる。

「なるほどな…お前がそこまで頑固なら、会った時覚えてろよ。3分とは言わず、一瞬で解体してあんたのところへ迎えに行ってやるぜ…だから逃げずに待ってろよ、俺の運命さんよぉ」

だがまぁ…焦りこそ最大のトラップだ。だから先ず…俺が一番信頼を寄せる萩原に連絡を入れた。

ーーー。

「ふはっ!流石は春枝ちゃん…無茶し過ぎだわ。本当勇ましいというかなんというか…」
「笑い事じゃねぇよ。まぁ…なんだ、春枝のこと頼むな」
「勿論。でも本音を言えば松田が助けたいんじゃねぇの?」
「まぁな、だが放置するわけにも行かねぇからさ…残り3秒で確認してから切ろうと思う」
「…松田、無理すんなよ」
「あぁ、萩原もな」
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