第20章 運命の番(過去編)3.5
任せて欲しいといったような力強い口調で伝えられ、俺の番は相変わらず男前だと呆れるように笑った。そして少しばかり静かになり、彼女は明るい声で『米花中央病院』にいると伝えられた。どこか悪いのかと聞けば、発情抑制剤を貰いに来たといつも通りの言葉遣いで教えてくれる。ほっとしたのもつかぬ間…春枝はのんびりとしたトーンのまま俺に爆弾を投下した。
「……偶然腰掛けた椅子の下に可笑しな包みがありましてね?」
「はっ?」
「察しがいいですね、流石は警察官です。それで私も陣平さんと同じく爆発物とランデブーなんですよねぇ…」
「はっ?」
「あぁ、大丈夫ですよ?他の皆さんは全て避難させましたし…今待合室で寛いでいるんです。シャッターが閉まっているので、死んだとしても私くらいでしょうか」
「はっ?」
「もう、さっきから陣平さん…はっ?しか言ってませんけど、ちゃんと理解してます?」
カラカラと高笑いする彼女の言葉が理解出来なかった。当たり前だろう…愛した番が俺と同じく爆発物と一緒にいると言っているのだ。目の前が真っ暗になり、目眩や吐き気さえ覚える。心配や犯人に対しての怒りの八つ当たりで「馬鹿野郎!!巫山戯てねぇで、今直ぐ出ろ!危ねぇだろうが!!」と大声で叫んでいた、しかし彼女は怯むどころか俺を煽る。
「嫌です。なにより私は死にません…なぜなら陣平さんが助けてくれることを信じてますから」
「なっ、チッ…今から萩原を呼んでやるからちょっと待ってろ」
「えぇ。研二さんが来てくれるのは心強いですけど、陣平さんは本当に解体してくれますか?他にも爆発物があるかも知れない…だから貴方は結局解体をしない。違いますか?」
図星だったため、ぐっと言葉を出せず口を閉ざしてしまう。そんな俺を春枝はくすりと笑って、血の気を引くようなゾッとするような言葉をまた伝えて来た。
「貴方が死ぬなら私も死にます」
「はっ…」
「100対1なら貴方は1を選ぶ…だからこそ私は敢えて1対1にしました。もしも自己犠牲を選ぶのなら、私は今直ぐにでも爆発物を床へ叩き付けて自爆します」
「お、お前…なに、いって…は、萩原はいいのかよ!?幸せにするって!そういったのは嘘だったのか!!」
「陣平さんのいない人生を残りの番と歩んだ所で…それは決して幸せとはいえませんよ。残された者の気持ちを良く理解して行動して頂きたい…」