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裏『探偵』αな女がΩの男達に求愛される話。

第5章 運命の番(4)…萩原研二>>1


「研二さんがまさか浮気ですか。へぇー…」
「浮気していない、ただの食事会っ!」
「ふーん?酔った勢いでα女性に抱き締められ、キスをされ。記憶があやふやなままα女性を私と間違えて襲われかけていたのはどこの誰です?うん?」
「ご、ごめんなさい…」

絶対零度の微笑みで、ソファーに脚を組む私に正座で座り込む研二さんに呆れてため息しか出ない。研二さんは誰よりも分からない人だ、優しくおちゃらけてはいるが本性を見せない人。だが、懐に入れた人間にはとことん甘くなる。しかし酒は強い方の研二さんがべろんべろんに酔っ払うことも珍しいため不思議に思えた。無理矢理ノリの良いからという理由で沢山浴びるように呑まされたか、睡眠薬でも盛られたかのどちらかだろうと思う。もしかするとどちらもかも知れないが…

私の別の番であった、陣平さんの嫌な予感がするという連絡を貰い迎えに行く。すると食われる一歩手前の所で馬乗りになっているα女が驚いたように私を見ていた。いつも冷静な私も流石に冷静でいられなくて、振りかぶるように平手打ちをかましてやった。濃いαのフェロモンを漂わせて強く睨み這うような低い声でぽつり呟く。

「この男は私の番だ。薄汚い手で触んじゃねぇよ。尻軽α女が…」

そう言えば恐怖するように逃げて行き、驚いたように野次馬もわらわらと集まって来た。研二さんはふにゃふにゃとした笑みで私に抱き着いてスリスリと擦り寄る。

「えへへ…春枝ちゃんがいる。怒った顔も可愛いなー…」
「はぁ…ほら研二さん、帰りますよ?」

研二さんの肩と腰を回して立ち上がらせるように抱き、札を長テーブルに叩き落として釣りはいらないと伝えて店を後にする。そして私の家になんとか連れて来て今に至るというわけだ。眉間に手を置いて考えている私を見上げており、申し訳なさげにまた謝って来た。私が呆れて怒っていると勘違いしたのか、研二さんの顔は既に涙目である。

「ふぅ大丈夫ですよ、捨てませんから…」
「っ!春枝ちゃ…っ」
「全く。陣平さんに感謝して下さいよ?連絡がなければ私は迎えに行かなかったんですから…」
「ごめんなさぃ…」

何度も謝って来る研二さんを見下ろして、両頬を手の平で包み込むと上を見上げさせた。私はオデコにそっとキスを落とす。私が聞きたいのはそれじゃない。

「ごめんなさいじゃなくて?」
「あ、ありがとう」
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