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裏『探偵』αな女がΩの男達に求愛される話。

第15章 運命の番(過去編)2.5


声を変えた春枝の雰囲気はどこかヒヤリとする。その姿は俺が知るかぎりでは二人しかいない。怪盗キッドとベルモットだ。声変わりというより、別人になりきり演じるという感じに近い。

「もしもし安室透さん…ですか?」
「っ、貴方…一体誰ですか。どうして僕の名を…いや、先ずはスコッチは無事なんでしょうね!」
「スコッチ…あぁ。緋色光さんのことですか?どうでしょうねぇ…どういう状況なのかを知りたいのでしたら東都タワーから直ぐのセキュリティが万全な高層ビルの最上階の奥の部屋へお越し下さい。コンシェルジュには事前に連絡しておきますので…それではお待ちしております」
「な、あ…おいっ!」

ブチッと電話を切った春枝は俺へ携帯を投げ上げた。俺はその携帯を空中でキャッチするように取り、苦笑いを浮かべる。うん、ゼロ…お前春枝に無断で連絡をたっただろう。少し機嫌が悪く見えるぞ?それにもう既に別の番がいる見たいだしーー…うん?ちょっと待て。春枝以外のΩの匂い。どこかで嗅いだことのある匂いのような気がする。いや…そんな馬鹿な。俺の勘違いだよな?それより…春枝にまだゼロのことを番にしたいのだろうか。だがゼロは春枝に対してずっと一途だったりするから、ここは俺が少しでもフォローを入れるべきだろうか。

「春枝…その…やっぱりゼロに対して怒ってるだろ」
「…そうですね、だって本当なら零さんは私の初めての番ですから。まさか連絡先も住んでいた家も全て途絶えてしまうなんて…考えられませんでした」
「それはゼロにも事情が…」
「安室透、偽名を使うということと…景光さんを酷く心配する雰囲気を見ても彼もまた公安なのも想像がつきます。確か…NOCバレというんでしたっけ?」

その言葉に俺は目を見開いた。なんだ、やはり気付いていたのか。春枝は鋭いとは思っていたが、ゼロの気持ちも理解して一度離れたのだろう。また自分の元へ現れることを願って…そんな健気な彼女が愛らしくて、そこまで想われているゼロが羨ましくも思えた。

ーーー。

コンシェルジュへと連絡を入れる春枝の姿を見つめていれば、俺を見た彼女はにっこりと微笑むとまた口を開く。

「警察に連絡を入れるのは様子を見た方が宜しいかと…」
「だが…」
「先ずは零さんが来てからにしましょう」
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