第15章 運命の番(過去編)2.5
「お兄ちゃん…数年、いいえ…もうかれこれ十年経ってしまいましたね?けれど漸く出会えた、理由は聞きません…ですが今度は私が貴方の厄災全てから必ず守ると誓いましょう」
「っ、俺と一緒にいたら…君が狙われてしまう…」
「大丈夫ですよ?もうただの小学生じゃありませんから…」
だから、私の番になって貰えませんか?と彼女の口からその言葉を聞いた。あぁ、あぁ、あぁっ…その言葉がずっと聞きたかった。君に愛されたかった。君の番になりたかった。あの日からずっと俺はゼロに嫉妬していたんだ、ほのかに香るのは彼女の匂い。ゼロから聞かされる彼女の優しさや可愛らしさを伝えられて、良かったなと自分自身の想いを気付かないふりをして笑っていっていたが内心は酷く胸を痛めていた。
「おれ…なんかで…いいのか」
「なんかだなんて止めて下さい…私は貴方が良いんです。だからもう逃げないで」
するりと頬を濡らす俺の涙を優しく拭ってくれる。暖かく柔らかい手を直に感じて、満たされるような気分になった。俺が彼女を避けていたというのも、彼女にはお見通しなんだろうな…きっと俺を気遣って会わないようにしてくれていたんだろうかと、考えれば考えるほど胸が苦しい。もっと素直になっていれば、彼女を悲しませることもなかったのだろうか…酷い回り道をしてしまった。俺の視界に入るのは、紛れもなく愛おしい彼女だ。俺の頬を手のひらで包み込み少し悲しげに目を潤ませて微笑むと、ぽってりとした彼女の唇が俺の唇と重なる。俺は一瞬驚くも直ぐにゆっくりと目を閉じた。
ーーー。
「先ずは零さんに連絡をいれて下さい」
彼女、春枝の部屋へと案内されて先ずはゼロに連絡をしろと勧めて来た。情緒不安定な俺を曝け出すように優しく問い掛けて包み込んでくれる。否定という言葉はなく、偉かったね、頑張ったね、お疲れ様と頷いて全て肯定してくれたことがなにより救われたのだ。生きていてくれてありがとう…と笑って伝えられた時、枯れていたと思われた涙がまた溢れ出した。抱き締めて離れない俺を、ずっと背中を撫でてぽんぽんと軽く叩いてくれる。それがなにより安心出来た。
奪われるように携帯が春枝の所へ行き、耳へと当てた瞬間ゼロの声が響いた。声が出そうになる俺を見た春枝はShh...と人差し指で俺の唇を押さえうっそりする。その姿にドキドキと胸が高鳴った。