第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
何だよ逢えて嬉しいって!!お前はファンか!?…いや、確かにファンだけど!この世界でその発言はおかしいだろ!!
この時代のシャンクスがどれだけ有名か分からないが、年端もいってない女の子(ただし外見のみ)からそんなこと言われても困るだけだろう。
寧ろ怪しすぎる。
ユーリは早速張られそうな不審者のレッテルに、内心嘆いていた。
「よく分からんが、嬢ちゃんは迷子か何かか?」
だがそこは器の広いシャンクス。
ユーリの怪しい発言を特に気にした様子もなく、丁寧に目線を一緒にして優しくそう問いかけてくれた。
「…え、あ…そう…なのかな?」
ユーリはシャンクスの紳士っぷりに再び余計な発言をしそうだったが、何とか飲み込んだ。
だが、どう答えていいものか分からず、結局曖昧な返事しかできなかった。
そんなユーリの様子に何かを考え込んでいるシャンクス。
その後、両親はいるのか等色々聞かれて適当に答えていると、盛大に腹の音がなった。
「…だっはっはっは!あんな事があった後なのに、嬢ちゃんは本当に肝が据わってるな」
二人の間に沈黙が一瞬落ちた後、シャンクスの盛大な笑い声が響いた。
ユーリは恥ずかしさのあまりその場から逃走したかったが、シャンクスに捕獲され、何と酒場に連れていかれた。
シャンクスに抱えられたまま店に入るユーリ。
その瞬間仲間達から多くの視線が寄せられた。
「お、お頭が、遂にそっちの趣味に…」
「ちげーよ馬鹿!!ついさっき助けてやったんだ!お前らも気づいていただろうが!」
シャンクスはユーリをカンター席に座らせると、その隣に腰を掛けてマキノさんに料理を頼んでいた。
仲間たちの冷やかしの声に反応よく答えるシャンクス。
そんな微笑ましい光景の中で、ユーリだけは抱えて貰った感覚を至福の表情で静かに噛みしめていた。