第2章 中編 古代都市シャンドラ
「シャンクス、久しぶりね」
シャンクスがユーリを連れて広間に向かっていると、声を掛けられた。
一瞬誰か分からなかったシャンクスは振り返り、視線の先にいた人物に首を傾げる。
「…エミリア?確か到着は明日と聞いていたが…?」
エミリアと呼ばれた女性はシャンクスに腕を絡ませると、親し気に彼の身体に触れる。
「ふふ、一日でも早くあなたに逢いたくて、予定を早めたのよ」
「…それは光栄だな。そうならそうと言ってくれれば案内を寄こしたんだが」
シャンクスは一瞬何かを考える素振りを見せたが、すぐに笑みを浮かべる。
彼女はここから離れた国を治めている王女で、シャンクスの婚約者だ。
この世界の序列が最下位のシャンドラに対して、彼女は上位に君臨する実力者。
実力者といっても、そのほとんどが先代の残した兵力と技術のおかげではあるが。
そんな彼女がシャンクスと出会ったのは5年前。
彼が国王に付く前の話だ。
当時まだ王女でなかった彼女は、ある事件で誘拐された。
そしてそんな彼女を救ったのが、たまたまそこに居合わせたシャンクスだった。
ただの偶然ではあるが、その結果彼女はシャンクスに一目惚れしたのだ。
そこからの彼女のアプローチは早く、シャンクスとの婚約関係に至るのもそう時間は掛からなかった。
弱肉強食のこの世界。
シャンクスに選択肢はないと言っていいだろう。
その事実を、彼はどこか他人事のように受け入れていた。
元々彼女の話はこの国にとっても悪いものではない。
その為、特に断る理由もなかった。
「パーティの準備は順調よ。早くあなたと一緒に暮らしたいわ」
豊満な身体を押し付けて艶やかに笑う彼女は、誰もが認める美女だろう。
そんな彼女と一緒になれることに、不満などあるはずがない。
そう、最近まで思っていた。