第2章 中編 古代都市シャンドラ
ーーー私の名前は……ありません。
灰色の世界で繰り返し見ている夢。
シャンクスは、目の間に立っている彼女に近づくことも、触れることもできなかった。
地面に縫い付けられたように、動くことが出来ない彼。
ただ、彼女から紡がれる言葉を聞くだけだ。
その状況が、もどかしくて仕方なかった。
彼女の言葉を聞くといっても、夢から覚めると思い出すことが出来ない。
何時の日か、名前のない彼女に無意識に名前を与えた。
その名前を、彼女は気に入ったようだ。
夢と現実が入り混じる中、シャンクスはその名前を小鳥にも与えた。
それは、彼女が必ずと言っていい程、シャンクスに小鳥を差し出すからだ。
そっとシャンクスの手にその鳥を乗せると、彼女は消えていく。
それが夢の終わりの合図だった。
ーーーー……て。……は……ない
目が覚める前に何時も紡がれるその言葉。
それが聞き取れることは、一度もなかった。