第2章 中編 古代都市シャンドラ
シャンドラの家臣であり、医者であるロー。
彼はこの国の貴重な医者として、日々忙しく過ごしていた。
その姿を少し離れたところから見ているユーリ。
ここ最近、彼はこの国で流行っている病の対処に追われていた。
診療所には高熱が出ている子供で埋め尽くされている。
ーーー人間は大変なのですね
機械である彼女には縁のない病だが、出来ることならどうにかしてあげたかった。
「…おまえ、今日はそこにいたのか」
そしてユーリの存在に気づいたローは、彼女を呼んだ。
呼ばれるままに彼の肩に移動するユーリ。
過去に何回か、病が移ると言ってやんわり部屋から出されそうになったが、ユーリは何時もこの場所に来ていた。
すると次第に諦めたのか、今では彼女の好きなようにさせている。
小鳥の姿である彼女の姿は、何気に子供に人気だった。
体調があまりにも酷い子供の相手は出来ないが、回復の兆しが見えている子供の遊び相手はできる。
ユーリはローの肩から羽ばたくと、ベットに座っている子供の元へ移る。
それに嬉しそうにする子供。
その様子を見てローは目を細める。
そして乱暴に扱うなよと言って、他の子どもたちの診察を始めた。
ユーリはそんな彼の姿をそっと見ていた。
何時も不機嫌そうな彼だが、人々から寄せられる信頼は大きかった。
それだけ彼は、真剣に病と向き合っているのだろう。
そしてそんな忙しい中でも、偶にユーリの診察をしている彼。
シャンクスから言われたからという理由もあるのだろうが、しなければしなくてもバレないだろうに。
彼の医療に対する強い想い。それは何時も、誰かの為に与えられている。
この国に住んでいる人々は、何時も誰かを思って動いていた。
何時滅んでもおかしくない状況なのに、笑顔の耐えないこの国。
彼らは、怖くないのだろうか。
耳を済ませば、微かに聞こえてくる大勢の足音。
機械であるユーリにしか聞こえないその音は、日を追うごとにシャンドラに近づいている。
きっと、そう遠くない未来、この国は襲撃にあうだろう。
その事実を、ユーリは静かに受け止めていた。