第2章 中編 古代都市シャンドラ
次の日。
シャンクスは遺跡を後にした。
移動中フードを被る必要があったので、小鳥はポケットに入れた。
妙に不満そうだったが、こればかりはどうしようもない。
シャンクスは相変わらず定期的に鳴き声を上げている小鳥に、苦笑する。
何だかんだで小鳥の世話をしているシャンクス。
本人は気づいていないかもしれないが、彼は無意識に小鳥を大切に扱っていた。
小鳥のさえずりを聞きながら、荒れた荒野を歩く彼。
帰りは面倒ごとに巻き込まれないよう願っていたのだが、現実はそう甘くなかった。
目の前に現れた、他国の紋章を掲げている軍隊。
来る時よりも厄介な状況に、シャンクスはため息を吐いた。
こんな荒れた大地を男一人で歩いているなど普通ではない。
案の定目を付けられ警戒された。
とりあえず投げかけられる尋問に適当に答えていたが、やはり逃がしてはくれないようである。
シャンクスを捕らえようと動き出す兵士達。
そんな彼らの動向に警戒しながら、ポケットの小鳥が心配になった。
……こいつだけでも、逃がせれるだろうか。
己の命よりも小鳥の命を気にかけるシャンクス。
その事実を部下が知ったら、頭がおかしくなったのかと思われるだろう。
一国の王として、その考え方は正気とは思えない。
だけど彼は、真面目にそう思っていた。
相手の数は100人程。
その中で実際に動いているのは数名だけだが、彼らの目をかいくぐって小鳥を空に飛ばせるだろうか。
いや、そもそも汚染されたこの空気に晒されて大丈夫なのか?
更に言うなら汚染されてない生物は珍しい。
どう足掻いても、目立たずに逃げれる状況ではないだろう。
「……ッピ」
シャンクスが考え込んでいると不意に聞こえてきた鳴き声。
声のする方を見れば、何時の間にか小鳥がシャンクスの肩に乗っていた。
ーーやれやれ、まだ1%も回復してないのに危険に曝されるとは
「おい、あぶねぇから出てくるなよ。汚染されるぞ」
シャンクスは少し焦ったように小鳥に手を伸ばした。