第2章 中編 古代都市シャンドラ
「……っ」
シャンクスが警戒していると、突然頭上から何かが落ちてきた。
まったく感じなかったその気配に、彼の緊張も張り詰める。
すぐさま落ちてきたそれに目を向けるが、目の前にいたのは小さな鳥だけだった。
「………は?」
ジッとこちらを見ている小鳥。
鳥を視線を交わすという理解しがたい状況に、シャンクスは思わず素の声を上げた。
それに呼応するかのように、鳴き声を上げる小鳥。
どうみても不自然なその生物。
ここにくるまでに出会った生物は、どれも化学兵器で突然変異した化け物ばかりだ。
ここ数十年、化け物以外の動物など見たことがない。
「……何か言いてぇのか?」
シャンクスの頭は混乱していたが、鳥からの視線が煩かったので、思わずそう尋ねてしまった。
すると、小鳥が頷いた。
「……」
思わず二歩ほど後ずさるシャンクス。
ホラーではないが、少し不気味だった。
しかし小鳥はそんな彼を気にしてないのか、軽く羽を羽ばたかせると、彼の首の後ろにあるフードの中に納まった。
「…おいっ」
シャンクスは手を伸ばし小鳥を引っ張りだす。
手元に納まった小鳥を目の前に持ってくると、その綺麗な緑色に目を奪われた。
宝石のように輝くその毛並みは、そのまま放り出そうとした彼の手を止める。
緑、…それはシャンドラの国石の色でもあった。
そして緑色の鳥は、幸せを運ぶ存在として伝えられている。
今となっては鳥の存在自体消えてなくなってしまったが。
「……はぁー」
シャンクスは手元の鳥を眺めること数分。
結局捨てるに捨てられなくて、盛大にため息を吐いた。
そして小鳥は再び彼のフードの中に入っていく。
…何やってんだ、おれは。
どうみても怪しい存在なのだが、当然敵意は感じない。
寧ろ、こんな鳥一匹に何を警戒しているのかと馬鹿馬鹿しくなった。
かと言って、連れて帰るのもどうかと思うが。
シャンクスはフードの中でピッピ鳴いている小鳥に、何とも言えない気持ちになる。
しかし結局は、その小鳥の好きにさせることにしたのだった。