第2章 中編 古代都市シャンドラ
「……」
突然感じた違和感。
ゾクリと身体を這いあがったその感覚に、シャンクスは思わず歩みを止めた。
今まで気配は1つも感じなかったはずだ。
なのに、この胸騒ぎは何だ?
シャンクスはゆっくりと視界を周囲に巡らせた。
目に映るのは、荒れ果てた遺跡のみである。
……?
気配を探りながら足を進めると、不意に枯れ果てているはず草花が、不自然に咲いている場所に辿り着いた。
足元に広がる美しい草花は久々に見るものだが、それを感動できるには違和感の方が大きい。
目線を足元から正面に戻す。
無意識に、眉間に刻まれていたシワが深くなった。
これは、珍しいですね。
瓦礫の山から顔を覗かせる、1人の人間。
いや、人間といっていいものだろうか。
破れている皮膚から覗かせる機械の一部。
姿形こそ人間のものだが、彼女の瞳には生気がない。
ボロボロの姿の彼女が持つ、美しい金色の瞳。
彼女は、頭上から静かにシャンクスを見下ろしていた。
いい加減、ここから出るべきでしょうか。
壁に寄り掛かり静かに彼を見ていた彼女は、ゆっくりとその身体を起き上がらせた。
古代戦争が終わり、命を狙われ続けて数千年。
神殺しとして造られた彼女達は、気が付けば見捨てられていた。
最後の一体となってしまった彼女も、いつ壊れてもおかしくないほど損傷している。
壊れたプログラムを修正しようにも、その間彼女は無防備になる。
直す為には、暫くの間安全な場所に身を置く必要があった。
長年、プログラムを修正できる場所を探していたが、もう迷っている時間はなさそうだ。
まだ会ってすらいない彼に、全てを託すのは不安の方が大きい。
だけどなんとなく、彼なら大丈夫…そう思った。
静かに瞳を閉じた彼女。
その姿は、美しい緑色の羽を持つ小鳥へと姿を変えていく。
ーーーさぁ、旅の人よ。私をここから連れ出してください