第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
「…ん?なんだこのガキは?」
不意に降りかかってきた声に顔を上げると、山賊の頭がこちらを見下ろしていた。
(…あれ、私が見えてる?夢なのに?…いや、別に夢とか関係ないのか?)
未だに夢を見ていると思っているユーリは、キョトンとした表情で山賊達を見上げていた。
「頭!こいつの容姿中々整ってますぜ!売ればいい金額になるのでは!」
無遠慮に顎を掴まれたかと思うと、顔の覗き込まれそう豪語する仲間の1人。
近すぎる距離に、ユーリの顔が僅かに引きつった。
「あぁ、確かにそうだな。そっち系の趣味の奴にも受けが良さそうだし、将来も楽しめそうだ」
仲間の言葉に満更でもない様子の頭。
そんな山賊達の様子に、ユーリはそっとため息を吐いた。
ユーリはこれから展開されるシャンクスとルフィのシーンを見る使命がある。
悪いが他を当たってくれと、目の前の男を押しのけようとした。
だが所詮子供の力か、簡単にあしらわれ、あれよあれよという間に捕まってしまった。
「ちょ、ちょっと待てい!私は忙しいんだ!邪魔をするな!」
仲間の1人に担がれジタバタと暴れるユーリ。
ここに来て漸く身の危険を感じ始めた。
「急に喋ったかと思えば何言ってんだこいつ?」
「別に多少頭がおかしくても、容姿が整ってれば問題ない」
ユーリが暴れてる間にも会話は繰り広げられる。
何かかなり失礼な言葉が聞こえてきたが、それよりも今はこの場を逃れ、シャンクスとルフィを見る方が重要だ。
己の命よりも2人を優先するユーリ。
それは夢だと思っているから出来るものだろう。
村人が怯えて遠巻きに見ている中で、ユーリは特に怯えた様子もなく離せとばかりに暴れていた。