第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
「野郎共乾杯だ!!ルフィの根性と俺たちの大いなる旅に!!」
ユーリが人の気配がする建物の前に辿り着くと、聞こえてきた何かを祝う声。
「……え?」
ユーリは一瞬状況が理解できずその場に立ち尽くしたのだが、慌てて扉の端から中を伺った。
視線の先に見えたのは、赤髪海賊団と子供時代のルフィ。
(………や、やったぁぁぁぁ!!)
ユーリは暫くその場でフリーズしていたが、即座に心の中でガッツポーズを決めた。
名探偵コナンかと思っていたが、しっかりとワンピースの夢を見ていた。
そんな自分自身に拍手を送ると、目の前で繰り広げられるシャンクスとルフィの姿を目に焼き付けていた。
(うわぁぁ!!すげぇリアル!ルフィかわいい!シャンクスカッコいい!)
息を荒げながら扉の端から中を伺っているユーリは、最早ただの変質者だ。
しかし、今この場にユーリを止める者は誰もいなかった。
ユーリの存在に気づいている者は今のところいない。
それは、山賊も含めてそうだった。
ユーリの横を大勢の山賊たちが素通りしていく。
そして原作通り、シャンクスに酒をぶっ掛け、店を荒らしていく山賊達。
ユーリはその様子を、ハラハラした気持ちと興奮した気持ちで見ていた。
(いやぁ、流石将来の四皇は器が違いますね。普通に考えてこの状況で怒らないとか菩薩かよ。…ん?そういえばシャンクスは何時四皇になったんだろう?)
静まり返った店の中でふと浮かんだ疑問。
正直、シャンクスは明かされていない情報が多すぎて謎に包まれていた。
考えれば考えるほど、気になる点が多すぎる。
そしてユーリが物思いに耽っていたためか、その身体に影が落ちたことに気づかなかった。