第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
「…っ!?」
彼の急所を捕らえた、そう思った筈だったのに。
「…これは、驚いたな」
ユーリの姿は一瞬にして、再び地面に戻されていた。
目の前には、少し驚いた表情をしているシャンクス。
いや、私の方が驚いてるんですが。
彼を捕らえたと思った瞬間、空間が歪んだ気がした。
まさか彼の能力は、空間を操る系なのか?
…何それ無理ゲーすぎる。
ユーリは顔を引きつらせると、唖然とした表情で立ち尽くした。
勝てるとは思ってなかったが、一撃くらいなら食らわせられると思っていたのだ。
そうすれば、何だかんだで私の強さを認めてくれて、上手く行けば仲間として迎え入れてくれるかもしれないと期待していた。
何時の間にか逃げる方向から、仲間になる方向へシフトチェンジしているユーリ。
それもこれも、逃げれないと分かり諦めてのことだ。
ならばあんな状況が続くよりも、一人の仲間として傍に置いて欲しかった。
そもそも戦いで勝負を仕掛けたのが間違いだったのか?
オセロとかの方がよかったのか?
ユーリは絶望的なこの状況に、軽く現実逃避をしていた。
今更感が半端ないが。
「…どうやら少々、甘く見ていたようだな」
ユーリが絶望に打ちひしがれていると、何とシャンクスが剣を抜いた。
「敬意を表し、おれも全力でいくとしよう」
静かに呟かれたその言葉に、ユーリは目を見張る。
ユーリは気づいていない。
シャンクスは10年前から、彼女の力を認めていたことに。
そして今、彼の中で何かが確信づいたのか、その剣先はユーリへと向けられている。
たったそれだけのことなのに、全身が震える感じがした。