第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
いやいやオーバーキルですか?
止めてくれ、私はまだ死にたくないんだ。
表情を青ざめさせ、必死で彼の攻撃をかわすユーリ。
かわすと言っても、全部かわすなんて不可能だ。
彼が剣を抜いて早数分、ユーリの身体は多数の傷が斬り刻まれていた。
再生の能力を使っても、体力を消耗する一方である。
相手の剣術が格上なのは分かってるが、それに加えて空間系の能力者。
攻撃を避けたと言っても、身体が勝手に移動している。
流石のユーリも何度か攻撃を受けている内に学習し、それを見越して動いているのだが、正直色々無理だった。
ガンッ!
そしてあっという間に、この戦いに終止符が打たれようしている。
空間が歪み続けること数回、限界が来たユーリの身体はバランスを崩した。
その瞬間、彼によって地面に叩きつけられる。
首元スレスレに突き刺さった剣が、鈍い音をたてた。
「…この能力を使ったのは久々だな。随分と強くなったじゃないか」
ユーリを跨ぐように膝を立てて剣を突きつけた彼は、どこか楽しそうだった。
しみじみと言われたその言葉で、彼が半分遊んでいたことが分かる。
正直、ここまで実力の差を突きつけられると、悔しさを通り越して笑いが出てきそうだった。
あぁ、本当にーーーー
ユーリは諦めたのか、ゆっくりとその瞳を閉じた。