第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
ユーリが気を失って数時間後。意外と彼女は早くに目を覚ました。
結構本気で覇気を浴びせた筈だが、なるほど、彼女は本当に強くなったのだろう。
「…は?」
痛む頭を抑えながら起き上がった彼女の第一声。
その困惑した声に、シャンクスは笑いを押し殺した。
「いやちょっと何してるんですか?外してください」
そう言って両手を前に掲げたユーリの手首には、海楼石が嵌められていた。
全く持って意味が分からない。
結構ガチな覇気を浴びせられた挙句にこの仕打ち。
っは!?もしかしなくても、10年前のことを相当根に持っているのか!?
だからそれは治すと言ってるじゃないか!
「悪いがそれはできねぇな」
「いや、どうしてですか?10年前のことを根に持ってるなら今すぐにでも治しますんで許してください」
「許すも何も、おれは別に怒ってねぇぞ?」
「え?じゃぁこの状況は一体何なんだ?」
ユーリは彼の意図が全く分からず、首を傾げた。
この状況が何1つ理解できないのだが。
「勝手に腕を治されても困るからな」
「いやいや意味が分からないです。片腕よりも両腕のほうが絶対いいですよね?……もしかして、あなたの左腕的な存在の方が怒るのですか?」
そんなわけないと思っていても、それ以外思いつかなかったから仕方ない。
案の定、彼から笑い声が漏れてきた。
「随分と面白いことを言うじゃねぇか」
「そうですね。自分でも何言ってるか分からなくなってきました」
ユーリはため息を吐くと、横になっていたベットに腰を掛けて彼と向き合った。
椅子に座っていた彼は酒でも飲んでいたのか、テーブルの上に瓶が置いてあった。
いや今はそんなことはどうでもいい。
問題は、この訳の分からない状況だ。
さっと腕を治させてもらって、さっと立ち去ろうとしたのに、何故私が彼の船に乗っている。
窓から見える海の景色が静かに動いているということは、もう出航した後なのだろう。
因みに腰に付けていた剣は何時の間にかなくなっていた。
いや、本当に、何だこの状況。