第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
やっべーどうしよう勢いてここまで来たけど、どのタイミングで行けばいいのか分からない。
エースと白ひげの遺体を運んでいくクルー達を、ユーリは離れたところから眺めていた。
正直行けば何とかなるだろうと思い何も考えてなかった。
その考えるより先に行動に移ってしまう自分自身に、ここに来て初めて嫌気がさした。
今この場を逃せば、もう二度と彼に会えないだろう。
だが、シャンクスはユーリを覚えているだろうか?
ユーリにとっては一瞬の出来事だが、彼はあれから10年も経っていることになる。
ちょっと腕を治させてくださいと言って近づいて、はいお願いしますとなるだろうか?
いや、なるわけがない。
場所が場所なだけに、どう見ても怪しすぎる。
考えなくても、ばっさり斬られるか、仲間から攻撃される光景が目に見えた。
ユーリは頭を抱え込んでことの重大さに漸く気づく。
マリンフォードに目を付けたのは悪くないかもしれないが、どう考えても腕を治せる雰囲気ではない。
もうここまで来てしまった以上、引くに引けないので強硬手段に出るしかないのか。
強硬手段も何も、向こうからすれば悪い話ではない。
問題は、私が信用するに値する人物ではないという事だ。
あっちが私を覚えてくれてばいいのだが……
「…おまえ、相変わらず遠くから眺めてるんだな」
不意に聞こえてきた声。
全く感じなかった気配に驚いて視線を向けると、そこにはあのシャンクスがいた。
ユーリの心配は杞憂だった。
だけどそれは、遥か昔から続く、長い物語の続きだと
この時、彼女は気づきもしなかった。