第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
「…え、あ…私のこと覚えてるんですか?」
「あぁ、そうだな。忘れるわけないだろ?」
そう笑みを張り付けてこちらへ近づいてくるシャンクス。
なぜだろう、少しだけ違和感を感じた。
だけど向こうが覚えてくれていたのならば話が早い。
「10年前は大切な利き腕を…すいませんでした」
「なんだまだ気にしてたのか?あの時気にするなと言っただろ?」
一体どの口がそういうんだと、シャンクスは内心思ってた。
そうなるよう仕向けたわけではないが、結果そうなった。
まさか彼女の心を縛り付ける為とは、考えもしないだろう。
「気にしないなんて無理ですよ。だから、治しにきました」
ユーリのその言葉に、シャンクスは思わず歩みを止めた。
今、何と言った?
シャンクスは探るような目で彼女を見る。
彼女に流れる覇気は、10年前のものに比べて大分変っていた。
恐らく彼女は、強い。
下手をすれば、悪魔の実も食べていそうだ。
……あぁ、だから『治す』なのか
瞬時にその可能性を叩き出したシャンクスは、張り付けていた笑みを消した。
「それじゃぁ困るんだよ」
ユーリがシャンクスの腕に触れようとした瞬間、呟かれた言葉。
「…え?…っ…!?」
ユーリは何のことだと思って彼に視線を向けると、激しい頭痛に襲われた。
…これは、覇気!?
ユーリは意味が分からず咄嗟に飛びのいたが、間に合わなかった。
至近距離で諸に覇気を浴びてしまったユーリは、その場で膝から崩れ落ちる。
それを抱えたのは、彼に残された片腕。
「…どう…して…」
朦朧とする意識の中で、辛うじて口に出来たその言葉。
その言葉に、シャンクスは笑みを深めただけだった。