第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
シャンクスの先ほどの言葉で全てを理解したベン。
タバコの煙を吐くふりをして、盛大にため息を吐いた。
……逃げられたのか。あのお頭が。しかも子供相手に。
俄かに信じがたいが、今ユーリがここにいないことが全てなのだろう。
「あんまりしつこいと、嫌われるぞ」
ベンはもう勝手にしてくれとばかりに、冗談交えてそう返す。
そんなベンにシャンクスは笑みを深めただけだった。
あまり見たことない彼のその表情。
ベンは僅かに顔を引きつらせた。
この時、シャンクスのことだから直ぐに諦めると思っていた。
意外と飽き性でもある彼。
この広大な海でたった1人を見つけることなど、不可能に近いだろう。
それが、未だに謎に包まれている彼女なら尚更だ。
幼いながらに覇気を使った彼女。
そして一瞬で島から消え、あのシャンクスでさえ捕らえることの出来なかった彼女。
一体彼女は何者なのか。
まさかそれを10年後に知ることになるとは、この時予想もしなかった。
それはつまり、10年間、シャンクスは彼女を探し続けていたことを意味する。
初めて見せた、この男の執着心。そして狂気。
正直、笑えなかった。