第3章 後編 王の願い 少女の想い
王宮から離れ、二人は再び鐘の近くに来ていた。
そこから見下ろす街並みは見るも無残な姿だが、当時は美しいものだったのだろう。
それこそ、以前夢で見たあの光景の様に。
「……ユーリ」
シャンクスは少しだけ思いつめたような表情で街並みを見下ろしている彼女を呼んだ。
声に反応して振り返った彼女の前に跪いたシャンクス。
そして彼の行動に困惑した表情を浮かべている、彼女の左手に触れた。
「おまえを、愛している。この気持ちはこれから先、ずっと変わらない」
静かに伝えられる言葉。
ユーリは驚き、目を見張った。
「だから最後の時まで、おれの妻として、ずっと共にいてくれないか?」
シャンクスの右手には美しい緑色の宝石を飾った、指輪が乗せられていた。
それは、ポーネグリフの隣に置いてあった指輪と似ていて、ユーリは一瞬息を飲んだ。
変わらない愛情。そんな言葉が脳裏によぎった。
「…っ…はいっ…ずっと一緒にいます。…今度こそ、ずっと一緒にいさせてください…」
ユーリの頬に一筋の雫が零れ落ちた。
そんな彼女の返事にシャンクスは笑みを浮かべると、彼女の薬指にそっとそれをはめる。
彼女の瞳と同じ色をした、美しい宝石を飾るその指輪。
それは、以前ユーリがシャンクスを街で目撃した時に買ったものだった。
泣きながら抱きついてきた彼女を抱きとめたシャンクスは、そのまま彼女を抱え上げた。
シャンクスの首に腕を回し、必死にしがみついている彼女。
そんな彼女の背中を撫でながらふと背後を振り返った。
ーーーーあぁ、そうか
シャンクスの目に映ったのは、廃墟と化した国ではなかった。
美しいその街並みに、行き交う人々。
それらの光景は一瞬で消えてしまったが、勘の良いシャンクスは少しだけ分かった。
ーーーーきっと、おれは、ここで……
脳裏に浮かんだ可能性に、彼は笑みを浮かべた。
未だに泣いているユーリを慰めながら来た道を戻る。
そんな二人を祝福するかのように、鐘の音が聞こえたような気がした。