第3章 後編 王の願い 少女の想い
暫く泣き続けていたユーリだったが、漸く落ち着いたのか、そっとシャンクスから離れた。
そしてポーネグリフを手に取り、彼に渡しその詳細を話す。
「…へぇ、そりゃ凄いな」
何とも半信半疑でポーネグリフを眺めている彼。
世界を縛るほどのルールをこの石1つで出来るとは。
だが、彼女がそう言うなら本当なのだろう。
最早シャンクスは、彼女の言葉を疑う気はなかった。
「その石は本来はあなたの物です。だから好きにしてください」
きっとロジャーはここに来て、前世の記憶を取り戻したのかもしれない。
だからあのようなメッセージを残し、シャンクスが何時か私とここに辿り着くのを期待していたのだろう。
「おれのものってことは、おれもここに住んでいたのか?」
「…はい」
「そうかそれはよかった」
「え?どうして?」
「だっておまえはここにいたんだろ?ならおれだって一緒にいたい。それが例え、過去の話であったとしてもだ」
ユーリの話ではシャンクスの名前は出てこなかった。
だからてっきりシャンクスはそこに一緒にいなかったと思い、勝手に不満に思っていたのだ。
「ふふっ、心配しなくても、ちゃんと私と一緒にいましたよ」
あなただけじゃない、ルフィやロー、今は死んでしまったけど、エースだっていた。
皆、シャンクスに仕えていた。そしてシャンクスは機械であった私を愛してくれた。
だけど、ユーリはそのことまでは話さなかった。
もし、彼が記憶を取り戻した時は話そう。
そう思っていた。
「しかしどうすっかなー。これ」
シャンクスは暫くポーネグリフを持ったまま考え込んでいたが、何を思ったのかそれを再び同じ場所に戻した。
「あれ?いらないんですか?」
彼が望むなら、どんな世界でも作れるだろう。
それ程の力をこの石は持っている。
だけどシャンクスは、その望みを口にすることはなかった。
「おれの夢は、次の世代に託したからな。あいつなら、何時かきっとここに辿り着けるだろう」
そう笑ったシャンクス。
ユーリの脳裏に過ったのは、麦わら帽子を被った1人の青年だった。