第3章 後編 王の願い 少女の想い
ユーリとシャンクスが暫く話しながら足を進めると、廃墟のような場所に辿り着いた。
ユーリが一瞬足を止めていたが、シャンクスが呼べば何事もなかったように後に続いた。
そこから再び暫く歩くと、何時の日か夢で見た、大きな鐘を見つけた。
流石のシャンクスも足を止めて、その鐘に視線を奪われる。
ボロボロになったその金色の鐘は、音を鳴らすことなく静かにその場に佇んでいる。
暫く二人してその鐘を眺めていたが、ふとユーリが何か文字が書いてあることに気が付いた。
「…これは、古代文字か?読めねぇな」
ユーリが指さす方へ視線を向けると、確かにそこには文字が書かれていた。
鐘の内側に書かれた文字は、誰かが掘ったのだろうか。
「シャンクス、そしてユーリへ」
シャンクスが暫くその文字を見ていると、不意にユーリが口を開いた。
「何時か二人がこの場に辿り着くことを期待して、ここに言葉を残す」
静かに彼女から紡がれていく言葉。
それは、ロジャーからのメッセージだった。
メッセージ自体は短いもので、ある場所へ向かえと書いてあるだけだそうだ。
ユーリが古代文字を知っていたのにも驚いたが、なぜロジャーがユーリの名前を知っている?
ロジャーが生きていた頃は、ユーリはまだ生まれていないはずだ。
そんなシャンクスの困惑を感じたのか、ユーリは少しだけ困ったように笑みを浮かべていた。
「取り合えず、ロジャーさんが記した場所に向かいましょうか。その間、少しだけ昔話をしようと思います」
ユーリはシャンクスの手を取ると、その場を離れた。