第3章 後編 王の願い 少女の想い
言いたいことだけ言われて、一方的に切られた電話。
言われなくても、シャンクスがいる以上ユーリに近づくことなど無理だ。
そんなこと分かりきってることだろうに、なぜわざわざ脅す真似をするのか。
シュライヤは電伝虫をテーブルに戻すと、思いっきり脱力した。
なんだか、非常に疲れてしまった。
「おれがいなくなった途端に浮気か?」
「なわけないですよ。先日の件で迷惑を掛けたので謝っていただけです」
勝手に電話を切られたかと思えば、そのまま抱え上げられベットに押し倒されたユーリ。
何となく嫌な予感がしたが、どうやら彼は本気で怒っているわけではなさそうだった。
暫く上からユーリを見下ろしていた彼だが、フッと笑うとその隣に横になった。
「どうもおれは、おまえのことになると心が狭くなるらしい」
「知ってますよそれくらい」
「嫌じゃねぇのか?」
ユーリを抱き込むようにその背中に手を回し、視線を合わせてきた彼。
その瞳に浮かぶ、僅かな不安な色。
滅多に見せない彼の姿に、ユーリは思わずまじまじとその表情を見てしまった。
「…言っておきますが、私だって嫉妬くらいしますよ?シャンクスが美人とイチャイチャしてたら、うっかり手元が狂うかもしれないです」
「そうかそうか、おれもだいぶ愛されてるなぁ」
「え?また刺されたいんですか?ドMですか?」
なんだか非常に嬉しそうなシャンクスに、ユーリは若干引いていた。
もちろん冗談だろうが、彼の場合何処までが本気でどこまでが冗談か分かりにくい。
そんなユーリの表情に気づいたのか、笑みを消したシャンクス。
「心配しなくても、おれはおまえだけだよ」
迷うことなく真っすぐと告げられたその思い。
たったその一言で、ユーリの心は満たされた。
どちらともなく口づけを交わせば、感じるのは幸福感。
それは、ずっと私が感じたいと思っていた感情だったのかもしれない。