第3章 後編 王の願い 少女の想い
「よぉ、意識が戻ったそうじゃないか」
ーーーーげっ、赤髪…
暫くシュライヤとの会話を楽しんでいたユーリだが、突如電話をシャンクスに取られた。
近くに来ていたと気づかなかったユーリは、軽く驚いた。
「あの時釘を刺したにも関わらず、よくもまぁ連れて行ってくれたな?」
「いやそれは私がーー」
シャンクスの言葉にユーリが慌てて否定しようとしたが、その口は彼の手によって塞がれた。
ーーーーよく分からねぇが、何か困ってそうだったからつい助けちまった。……まぁ、それ以前に黒ひげの件で巻き込んだのは悪かったよ。
違う。シュライヤは最初ユーリの申し出を渋っていた。
それをゴリ押しで船に乗せてもらうよう頼み込んだのはユーリだ。
だけど彼は、ユーリのせいだと一言も口にしなかった。
「ほぅ、弁解はしねぇのか?」
ーーーー弁解も何も、巻き込んだのは事実だ。どうしても許せねぇなら俺を殺しにでもくるか?つっても俺も海賊だ。相手が四皇だろうが簡単には死なねぇがな。
シャンクスの気迫にも動じることなく、はっきりとそう伝えてくる彼。
なるほど、ユーリが頼み込んだだけはある。
シャンクスもシュライヤがユーリを無理やり連れていったとは思っていない。
これは単なる八つ当たりだ。
しかし彼は、一言もユーリのせいにはしなかった。
非常に面白くないが、人として出来てるのはシュライヤの方だろう。
どうもユーリが関わってくると大人気なくなってしまう彼。
そんな自分自身にそっと苦笑すると、ユーリの口を抑えていた手を解放した。
「そうだな、おまえが四皇の座につきたいなら何時でも挑戦は受けてやるよ」
ーーーーいやいや、そういう話じゃねぇだろ?四皇なんて興味ねぇよ。
「そうか、それは残念だな。いい加減この立場も飽きてきたから、そろそろ誰か変わって欲しいのだが」
ーーーーおい、人の話を聞いているのか?
「まぁユーリが世話になったな。…だが、再度言わせて貰うぞ。今度ユーリに近づいたら命はないと思え」
何やら文句を言っているシュライヤの言葉を無視して、勝手に話を進めるシャンクス。
そんな自由な彼に、シュライヤのため息は止まらなかった。