第3章 後編 王の願い 少女の想い
ラフテルまでの航路は、それなりに難航だったが、問題なく辿り着いた。
何ともあっけなく着いてしまったが、そういえばロジャーの時もこんな感じでたどり着いた気がした。
突然海の中から出てきた島にクルー達は驚いていたが、今のシャンクスはそれどころじゃなかった。
島に降りる準備をしているクルー達を見ながら、手元で握り締められている新聞。
新聞の内容は、黒ひげの死と、新たな四皇誕生を知らせるものだった。
その名前を見た瞬間、思わず驚きの声を上げたくらいだ。
新たな四皇 ユーリ
手配書と共にでかでかと書かれたその文字。
当の本人も、大声で悲鳴のようなものを上げていた。
確かに黒ひげを倒したのは彼女だろう。
だからと言って、そう簡単にユーリを四皇扱いされても困る。
当然シャンクスは、水面下で世界政府に抗議を申し出たが、中々上手く話が纏まらない。
どうも、四皇の座を空白にしたままだとかえって都合が悪いとか。
海賊同士の争いが激化するのを避けての作戦だろうが、そんなこと知ったことではない。
それは世界政府の都合であって、それに付き合う道理はこちらにはなかった。
しかし所詮相手は敵対している政府。
いくらシャンクスの顔が利くからといっても、そう上手くことが運ぶことはなかった。
シャンクスは手元の新聞を破り捨てると、この島を出たらユーリを四皇から引きずり下ろす作戦を考えることにした。
「夫婦そろって四皇か。それはそれで面白いな」
「笑い事じゃねぇぞ。なんならヤソップ、おまえが代わるか?」
「は?冗談きついぜ。俺にそんな器があるわけないだろう?」
「それを言うなら私もそうなんですが」
新聞を見てからずっと放心状態のユーリ。
現実逃避をしたいが、そうしても何も変わらない。
この先、ユーリを狙ってくる輩は必ず現れるだろう。
だが、不運か幸運か、四皇の内二人が同じ海賊団に所属している。
それを知っていて襲ってくる奴は、本当の馬鹿か、余程の実力者じゃないと無理だろう。
今のところその実力者は、同じ四皇のカイドウかビックマムしか思いつかない。
そして彼らは今回の出来事に、興味を示している気配はなさそうだった。