第3章 後編 王の願い 少女の想い
「なんだ見てたのか?あれはあの女が勝手にしてきたことだ。そしてその後引っ叩かれた」
「へ?なんで?」
「縁を切るって言っただけだ。まぁこの先ずっと一緒にいるつもりだったらしいがな」
「…それは世間一般的に、婚約関係にあったのでは?」
「別におれは婚約なんて結んだ覚えはねぇぞ」
「…どうせ、その気もないくせに適当に誑かしたんじゃ」
「おいおい人聞きの悪いこと言うなよ。女性に対して紳士に振舞うのは当然じゃないか」
「…その紳士っぷりが私には発揮されてないのですが、それはいかがなものでしょうか」
ジト目でシャンクスを見ていたがユーリだが、ふと彼の表情が変わった。
笑みを消した彼が、少し驚いたようにユーリを見る。
「それは、本気だからだろ」
からかう素振りもなく、静かに発せられたその言葉。
真っすぐと伝えられたその言葉に、今度はユーリが驚いたような表情をした。
「本気だったから、柄にもなく駆け引きなんてものをしていた。最初好きかどうか聞かれた時、言葉を濁しただろ?あれだってそうだ。おまえのおれに対する好感度は絶望的なのが分かってたからな。だから、好きだの愛しているなど、あえてそう言う言葉は口にしなかった」
ユーリの頬に手を当て、ゆっくりと撫でながら今までの行動を話してくれたシャンクス。
頬を撫でていた手は彼女の髪へと移り、白銀の髪を一房掴むと、そっと口づけた。
「このおれを本気にさせたんだ。責任はとって貰うからな?」
そう意地の悪い笑みを浮かべている彼。
恐ろしく整った顔で恥ずかしげもなく思いを伝えてくる。
それら一連の行為は、ユーリを動揺させるのに十分だった。