第3章 後編 王の願い 少女の想い
口淫を始めてどれくらい経っただろうか。
いい加減苦しくなってきたユーリは、視線でその旨を訴えると、漸く解放しれくれた。
「さて、次は何をしてくれるんだ?」
大きく息を吐き出しているユーリへ、追い打ちを掛ける言葉。
視線を向ければ、それはそれは楽しそうに彼は笑っていた。
「…次、と言われましても」
まさか、慣らすところから入れる所まで、更には彼をいかせるところまで、ユーリ1人にさせるつもりなのか。
幾ら重症と言えども、それはハードルが高すぎやしないか?
というか、全然重症そうに見えないのだが。
つい先ほどまで心配していたユーリだが、シャンクスの態度を見ていると、何だか平気そうな気がしてきた。
「分からないならおれから指示してやろうか?」
「……いや、あの、正直動けますよね?何で私にさせようとするんですか?」
「…ほぉ、人の胴体を剣で刺しておきながらおれに動けと?」
「いや、動けない程重症ならまた日を改めて…」
「あれは痛かったなー、全くの手加減なしで刺されたからなー」
「だからそれは、申し訳なく…」
「意地張って嫌いだって言われるし、別の男の所に行くし、ユーリには傷つけられてばっかりだなー」
一切の反論を言わせないかのように、言葉を続ける彼。
非常に言い方がわざとらしいが、述べていることは事実だ。
だからこそ反論できなかったユーリだが、ふとあることを思い出した。
「そういえば、シャンクスだって綺麗な人と、キスしてたじゃないですか」
街中で見たあの光景。
ユーリはこれならお互い様にできると思い、口元に笑みを浮かべた。