第3章 後編 王の願い 少女の想い
「色々と、話そうと思っていましたが。どこから話せばいいものか…」
ユーリが思い出した前世は一部のもので、まだ曖昧だった。
それでもよければ話すが、果たして話した所で彼に何か意味があるのだろうか。
下手をしたら思い出したくもない記憶を、蘇らせるだけかもしれない。
ユーリは再び悶々と考え込むと、何を話して何を話さないべきか迷っていた。
「あぁーそうだな。取り合えずおまえの気持ちを聞かせてくれ」
ユーリが考え込んでいると、先に向こうから提案をされた。
「気持ちって?」
てっきり過去のことを聞きたいのかと思っていたが、どうやら違うようだ。
「…命を掛けておまえを受け止めた男が、今目の前にいるんだぜ?何か思うことがあるなら遠慮なく言っていいぞ」
人の悪い笑みを浮かべ、半ば茶化すように告げてきた彼。
シャンクスが言わんとすることが分かったユーリは、一瞬呆けたような表情になる。
だがそれも、すぐさま視線を逸らし何やら慌てたような様子に変わった。
僅かに頬を染めている彼女。
シャンクスはそんな彼女の様子を見て、少しは好感度が上がったかと、内心思っていた。
「………好きです」
シャンクスが彼女の次の言葉を待っていると、まったく予想してなかった言葉が聞こえてきた。
「…好きに、なりました。……いや、本当は…もっと前から…かも…」
途切れ途切れに伝えられる言葉に、今度はシャンクスが驚き言葉に詰まった。
今回の事件で、少しは嫌いという底辺から好きへと上昇してくれればいいと思っていた。
だけど、彼女が伝えてくれた言葉は、最終的にシャンクスが望んでいたものだった。
まさかこんなに早く心が手に入ると思っていなかったシャンクスは、申し訳ないが疑いの眼差しを向けてしまった。
その視線に気づいているのか気づいていないのか、落ち着かないように視線を彷徨わせるユーリ。
シャンクスもシャンクスで、珍しく混乱した様子だった。