第3章 後編 王の願い 少女の想い
シャンクスが意識を失って一週間。
奇跡的に一命を取り留めたが、彼が目を覚ます気配はまだない。
ユーリはシャンクスが眠るベットの傍で、ずっと見守り続けていた。
あの後、シュライヤも無事に仲間に助けられ、挨拶も出来ず別れてしまった。
落ち着いたらまた連絡すると言って、連絡先は互いに交換した。
そして昨夜、シュライヤが目を覚ましたと報告を受けたユーリ。
安堵のため息を吐いたユーリは、礼を言って電話を切った。
振り返って視線を向ければ、未だに眠り続けるシャンクス。
……話したいこと、伝えたいことが色々あるんです。だから、早く目を覚ましてください。
ユーリはシャンクスの手に触れると、祈るように握り締めた。
思い出した過去はまだ一部でしかないが、彼女の心境は大きく変わった。
全てを受け入れると言って、ユーリを抱きとめてくれた彼。
例え過去の記憶がなくても、ユーリの中で1つの答えが出ていた。
そもそも、あの時嫌いと言ったが、意地を張ったのもある。
好きでもなければ嫌いでもない。
あんなことされておきながら、嫌いになってない事実に正直驚いていた。
もしかしたら、気が付かない内に惹かれていたのかもしれない。
それこそ産まれる前の、遥か昔であるあの日から。
「……っ」
ユーリが茫然とシャンクスを見ていると、彼の手が僅かに動いた。
慌てて彼の顔を覗き込むと、程なくしてゆっくりと開かれた瞳。
一瞬呆然としていた彼だが、視界にユーリを認識するとその瞳に生気が宿った。