第3章 後編 王の願い 少女の想い
ーーーー『シャンクスを殺せ』
ユーリが腰の剣に手をかけた時、脳裏に響いてきた声。
激しい頭痛が彼女を襲った。
ーーーーあぁ、あの時の仮を返しましょうか。
咄嗟に頭を抱え込んでいたユーリだったが、ゆっくりと正面を見据える。
その瞳は、金色に輝いていた。
「ティーチ」
襲い掛かってくる仲間の攻撃を交わした瞬間、静かに響き渡った声。
一瞬にして、強烈な光が辺りを包み込む。
ユーリの身を纏っている光と古代文字。
全ては一瞬の出来事だった。
悲鳴を上げるまでもなく、島全体が焼け野原になる。
倒れ行く仲間達を前に、黒ひげだけはなんとかその場に踏みとどまっていた。
僅かに残った理性でシュライヤだけは攻撃しなかった。
だけど、何時まで自我が保てるか分からない。
「こ…れは…まさか」
ユーリの使った力に身に覚えがあるのか、黒ひげの額から汗が流れ落ちる。
「私の名はウラヌス。あなたが聞く、最後の言葉になるでしょう」
ユーリが手をかざし能力を発動すると、黒ひげも瞬時に能力を発動させた。
光と闇が混ざり合い、激しく衝突する。
ユーリは激しい頭痛と吐き気、理性を失う感覚に恐怖を抱いていた。
私は、人間だ。ウラヌス…機械…ワタシハ…
強力な電流がユーリの中を流れる。
身が焼けるような痛みに、思わず力を解除する。
目の前には、地面に倒れた黒ひげ。
その事実に、安堵するという感覚はなかった。
シャンドラ……赤い結晶……
ユーリの瞳から一筋の涙が流れ落ちた。
シャンクス…ワタシハ……
走馬灯のように流れゆく、綺麗な王国の景色。
遠くから聞こえてくる鐘の音を最後に、ユーリは意識を手放した。