第3章 後編 王の願い 少女の想い
「驚いたな。まさかお前一人か?」
ユーリの姿を確認すると、1人で来ると予想してなかったのか怪訝な表情をする彼ら。
「確かこいつ、つい先日に5億の手配書が配られてたぜ」
「5億だろうが10億だろうがどうでもいいんだよ。赤髪も来ると思ったが、役に立たねぇな」
そう吐き捨てるように言った黒ひげの言葉に、ユーリは目を見張った。
どうやら黒ひげの狙いはポーネグリフだけではないようだ。
あの短期間でシャンクスの仲間であるユーリを認識し、シャンクスを表に出すための囮にでもしようと思ったのか。
となると、黒ひげは何時でもシャンクスを殺すつもりでいるのか。
ユーリは眉をひそめると、周囲の気配を探った。
シャンクスが来ると予想して迎え撃つ準備をしているのならば、どう足掻いてもユーリ1人で太刀打ちなどできるはずがない。
ユーリの視界の先には、地面に押さえつけられ、意識を失っているシュライヤ。
「役に立たなくて申し訳ないですが、さっさと取引をしませんか?」
「ゼハハハ!取引だと?」
「ポーネグリフは渡します。だけどその前に、シュライヤを返してください」
ユーリは彼らに見えるようにポーネグリフを掲げると、シュライヤに再び視線を送った。
ユーリのその言葉に、黒ひげは気味の悪い笑い声をあげるだけだった。
「この状況、俺にとってはどんな展開が望ましいか分かるか?」
見下すような視線でユーリに問いかけてくる黒ひげ。
どうやら端から、まともな取引に応じる気はなかったのだろう。
「そうですねー。ポーネグリフを奪い、シュライヤも殺し、私を囮にしてシャンクスでもおびき寄せるんですか?」
「へぇ、分かってるじゃねぇか」
「しかし、私に囮になるだけの価値があるかは分かりませんよ」
ユーリは瞬時に叩き出した最悪の可能性に、そっとため息を吐いた。
「それはやってみれば分かるだろうよ」
ユーリの元へジリジリと距離を縮めてくる、仲間達。
黒ひげはその場から動かず、笑い声をあげているだけだった。
さて、どうしたものか。
一見落ち着いているように見えるユーリだが、内心は絶望に包まれていた。