第3章 後編 王の願い 少女の想い
ユーリも一緒に戦うつもりだったが、無駄に紳士的なシュライヤに押し切られて、部屋で大人しくするように言いくるめられてしまった。
閉められた扉に、慌ただしく響く足音。
確かにユーリは強いかもしれないけど、仮にも女性を危険な目に合わせるわけにはいかない。大人しくここで待ってられるな?
そう真剣に言われてしまい、思わずユーリは「あ、はい」と答えてしまった。
なんだろう、この世界に来て初めて女性扱いを受けたような気がしなくもない。
そんなことに感動して暫くその場に固まっていたユーリだったが、すぐさま我に返る。
黒ひげ相手に、シュライヤが勝てるとは思えない。
ユーリは慌てて部屋から出て駆けつけたが、もうすでに遅かった。
目の前には黒ひげに捕らえられたシュライヤ。
クルー達から話を聞けば、やはり狙いはポーネグリフのようだった。
だが、彼らはこの石がポーネグリフだと知らない。
シュライヤは黒ひげの要求の意味が分からず、知らないと答えたのだろう。
だが黒ひげからすれば、シュライヤの手に石が渡っているという情報を知って行動しているはず。
当然、しらを切っていると思われて、捕らえられたのだろう。
意識を失っているシュライヤ。
咄嗟に黒ひげの船に乗り込もうとしたユーリだが、間に合わなかった。
「ゼハハハ!こいつの命が惜しければポーネグリフを持ってこい。期限は明日。ここから一番近い島、ネオ島で俺たちは待つ」
そういい捨てると、黒ひげの船は去っていった。
ざわつく船内に、動揺するクルー達。
クルーの中には負傷者も多数いたので、取り合えずユーリは船医と一緒に、彼らの治療を行った。
さて、どうしたものか…
ユーリは治療を済ませながら、動揺しているクルー達へと視線を送る。
どうやらこの船には、副船長の存在はいないようだ。
ならば、船長不在の今、誰が指揮を取る?
ポーネグリフのことも、彼らは意味が分からないだろう。
ユーリはそっとため息を吐き、負傷者の治療を粗方終えると、クルー達の元へ足を進めた。