第3章 後編 王の願い 少女の想い
シュライヤとしても海賊団の船長で実力もそれなりにある。
だから今回のことは、完全に油断していた己の自業自得だった。
誘拐犯など、所詮ただの言いがかりだ。
一国の姫が海賊に恋をしているなど、貴族出身でプライドの高い国王は許さなかったのだろう。
牢獄に入れられ、処刑の日を聞かされたシュライヤは、少しだけ死を覚悟していた。
だが、彼は今もこうして生きている。
それもあの姫のお陰だった。
シュライヤを牢獄から逃がし、仲間の元へ送り届けた彼女。
軽く話を聞けば兵士にも手をかけたようで、女って恐ろしいなとどこか他人事のように一緒に逃げていた。
彼女の覚悟を見たシュライヤは、ここまで来た以上一緒に連れていくつもりだった。
流石に姫の行動は城中に知れ渡っているだろう。
そんな場所に置いて行くのは、流石に気が引けた。
だけど、丁度船に乗り込んで出航しようとした時だろうか、突然響き渡った銃声。
時間帯的に夜だったので、狙われてると気づけなかった。
目の前には、シュライヤを庇って撃たれた彼女。
即死ではなかったが、駆けつけた船医は黙って首を振っていた。
シュライヤの中に生まれた後悔と罪悪感。
あの時助けなければ、また違う結末があったのではないだろうか。
悲痛な表情で彼女を抱き起こすシュライヤに、彼女は微笑んである石を彼に渡した。
「この石に、私の思いを託します。どうか、良い旅を」
その言葉を最後に、彼女は息を引き取った。
手元に残された正方形の形をした石。
それがなんなのか、シュライヤはずっと探していたが、結局未だ不明なままだ。
そんな時に出会った、赤髪海賊団に所属しているユーリ。
世界各地を回り、四皇の1人と共に行動している彼女なら、何か知っているのではないかと思って、今回話してみようと思ったのだ。