第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
ユーリは拘束された状態で海に落とされ、当然だが溺死寸前だった。
ただでさえ泳ぎが得意じゃないユーリ。
それに付け加えて拘束されている状態なんて、どう見ても死亡フラグしか見えなかった。
海に沈んでいき、妙にリアルな苦しさを感じていた。
ユーリは意識が朦朧としていく中で、夢なら早く覚めてくれと切に願った。
「…おいっ、大丈夫か!?」
そしてそんなユーリの願いを聞き入れたのは、神でも何でもなく、あのシャンクスだった。
強い力で引っ張られ水面に一気に浮上したユーリ。
突然触れた空気に、飲み込んだ海水を吐き出すユーリをどこか辛そうな表情でシャンクスは見ていた。
だが、取り合えず彼女が生きていることに安堵のため息を漏らす。
「…お頭!!!海王類だ!!」
そしてユーリを抱え船に引き返そうとした時、聞こえてきた叫び声。
シャンクスは無意識に身体を翻していた。
その瞬間、激しい痛みと共に海が赤に染まる。
シャンクスは一度大きく息を吐き出すと、再び攻撃を仕掛けてくる海王類へ向けて覇気を放った。
そして暫く睨みあいが続き、海王類は去っていく。
その様子を静かに見ていたシャンクスだったが、突然抱え込んでいた彼女が震えだしたことに気が付いた。
視線を向ければ、絶望の表情を浮かべてこちらを凝視しているユーリの姿があった。
助けてやったんだから少しは喜んだらどうかと思ったが、状況が状況なだけに仕方ないだろう。
大きな瞳からは大粒の涙が零れ落ち、ガタガタと震えるユーリ。
視線は彼の左腕に、釘付けだった。